わたし 往くところがない 夜は深く更けてゆく 街灯がチカチカ サンダルはパカパカ 着の身着のパジャマのまま 正しいことばかりじゃない ぬるい風を背に受けて バイトをサボった カラッポの頭で 夜空が白むのを待つ 贅沢な朝に 静寂の中に 深く深呼吸を 深呼吸を 深呼吸を 計画はいつも 頓挫するばかり とかく深呼吸を 深呼吸を 深呼吸を 気の済むまで いずれ 光が射せば 何故かやるせないことや 愛の意味だとか モヤモヤの総てが 日差しの中 消えてゆく せめて 一度だけでいい その命を賭けてくれ 今日に溺れても 明日に向かうから 何もかもを過去にして いつかは 窓辺にもたれて こぼれる朝日にまみれて 浮かぶように目を覚ます 明白な罪を 脆弱な嘘を並べ 新都心の駅前の 片隅で 軽薄なくせに 深刻なそぶり ふいに 新古今の和歌集の あの歌を思い出した 眠れない夜を 帰りたくない部屋を お布団を 忘れて ああ… そして 贅沢な朝に 静寂の中に 深く深呼吸を 深呼吸を やたら大袈裟な街に 迷い込んだまま やさしく 膝を抱えるように 夜は深く更けてゆく