2049 ヤンデルシティ テクノロジーと欲望の駆け引き 街を偽装する思考システム 電脳によってトレースする スクリーンから大気予報が 18時を知らせる 汚染を中和するため 明日はC02濃度が上昇するらしい いつしか生まれ育った街の記憶は 急激に薄まる この場所にもはや思い入れはねえ 久々の現実での食事 俺はクローンエッグをふたつ割る 貴重なタンパク源 残りストック3の 幻視ユニットによって 飲み物をミルクのように見せかける 何かがやたらとひっかかる 例えば壁に飾ってある絵や 微かに燃える煙草の吸殻 一見何気無いものが頭にひっかかる それは記憶にまつわるアイテム 嫌な予感 それは昔からよく当たる Peak過ぎて混迷 生きて証明 Fakeなrolex 見る前に跳べ 掴む運命 屍同然 また振り返ることもできねえ Peek過ぎて混迷 生きて証明 FakeなRolex 見る前に跳べ 掴む運命 屍同然 また振り返ることもできねえ 東京上空に築かれた巨大な空中楼閣 MOTHER DEEPER 規律を重んじ不逞をより徹底的に 制御可能としたテクノロジー 脳髄をAIに操作させるリビドー管理 世界に冠たるネットワークの中枢 この電脳都市を管理する 巨大な回転装置 だが見捨てられた地上では 電脳犯罪者たちが巣喰う無法地帯 それを揶揄していつしかここは 「YANDEL CITY」と 呼ばれるようになった 俺はオズマ 自分で名付けた時から ランを生業とする コンピューターカウボーイ 時には運び屋として 火星の不法移民からZEUSを密輸する 一昨年ヘマをして チャイニーズマフィアのヤンに 追われている 平行線の借金、 ジャンキー特有の震え 若さを追うようにシケたピュアを 飲み込む生活 もううんざりだ Peak過ぎて混迷 生きて証明 Fakeなrolex 見る前に跳べ 掴む運命 屍同然 また振り返ることもできねえ Peek過ぎて混迷 生きて証明 FakeなRolex 見る前に跳べ 掴む運命 屍同然 また振り返ることもできねえ だからこの依頼には すぐに飛びついた しかし焦りは禁物 トラップフィンガー 嵌められた ストラクチャーを逆探される デジタル回線を切り 俺は急いで三井東横ホテルを チェックアウトする ZEUSの禁断症状 繰りってる頭で追っ手の足音を 聞き分けるのは難儀 コートからナンブ&ルガーを 取り出す 指紋は照合済み 急いでマツダ ZM7に乗り込み 走らせる 逃避行 しかし追手に俺の セミ・オートノミックパターンは 読まれている 先読みに次ぐ先読み 袋小路 車に群がるゴロツキたち 汗が尋常じゃない 目が血走る 言われた通り銃を捨てる これで万事休す 「俺を殺すのか」 特殊義眼をはめた男が答えた 「いや、あんたを待ってた」 意識はまだ朦朧 俺は捕まり その場で雇われた 連れて行かれた地下は彼らのアジト 東京五輪の跡地 「待ってたよきみのことを」 そういう男の名はゾーン 旧ヒューマノイドの変異体 彼はそれを率いる レジスタンスのリーダー そして俺の嫌な予感の元凶 今回のランの依頼主 「試したんだ君が適正かどうか」 なるほど、俺の腕が 落ちたわけじゃないらしいな 「MOTHER DEEPERに 侵入してもらいたいんだ」 義眼をロールしながら言うゾーン 無理だ あそこは屈指の要塞 速攻脳を焼かれるし 冷やかしで行っただけで 戻って来れなくなった奴も知ってる それでも俺に拒否権はない 断ればその瞬間ブラスターで コメカミを撃ち抜かれる 「可能さ、きみならできる 《COPY CAT》だ」 そう言ってゾーンは仲間に コンソールを持って来させた それは噂にだけ聞いた幻の アカイプロフェッショナル トリプルS7000 ゾーンは作戦を語り始めた MOTHER DEEPER中枢のコアに 隔離されてる「K」という データバンクをサルベージする計画 対MOTHER DEEPER用に作られた 独自のハッキングプログラム 《COPY CAT》を使い 第七深層部まで侵入する 「K」と接続する チェックメイトコードネイムは 「Tetsuo」 どーやら昔のマンガの 登場人物らしい 報酬は借金の帳消し それと俺の過去改変を追加した 俺は自分からも自由になりたいんだ どのみち拒否権はない 俺は条件をのむ 向こうは時間がないらしい 俺は愛撫するように トリプルS7000に触れる 「いいぜ、diveしよう」 あやふやな夜 俺は最後にゾーンに聞いた 「K」って何なんだ? 見ればわかるさ そう言ってゾーンは コンソールに接続して 俺はまた膨大なネットへ 身を沈める……