僕に心を 君に花束を 揺れる髪だけ靡くままにして 箱の中の小さい家の、 二人で並んだキッチンの 小窓のカーテンの先の 思い出の庭に、 春の日差しを一つ埋めて、 たまには少しの水をやって、 小さな枇杷が生ったとき 忘れてください 僕に 僕に 僕に 僕に心を 君に花束を 揺れる髪だけ靡くままにして 僕に言葉を 君の鼻歌を 長い長い迷路の先に置いて 一つ一つ数えてみて。 あなた自身の人生の あなたが愛したいものを。 ……何もないのかい? 海の側の小さい駅を 歩いて五分の海岸の、 僕と見た翡翠の色も 忘れてください 僕に 僕に 僕に 僕に心を 君に花束を 揺れる髪だけ靡くままにして 僕に言葉を 君の鼻歌を 長い長い迷路の先に置いて 箱の中の小さい家の、 朝の日に揺れるカーテンを 開けた静かな休日の寝起きの君が、 寝ぼけ眼で座ったその 朝のダイニングテーブルに 僕の心があったこと、 忘れてください