夜にはあなたに優しく解かれる 髪を一人一途に結う朝にまで幸せは満ちていた 遠い記憶の底 私は息のできない魚を真似る様に 短い歌で唇を慰めていた その音色が柔らかな泡になって やがて空に届けばいい 冬にはあなたの頬の熱を感じた 指を一人一夜ながめるだけの夏は凍える様で ひとつまた溜息 私に世界の終りを選ばせるのなら あの穏やかな絶頂の日々にしたでしょう ただ瞳に映るもの全部が愛しくて泣けるほどだった 夜にはあなたに優しく解かれる 髪を一人一途に結う朝にまで幸せは満ちていた 遠い記憶の底 一人一途 せめて夢の中で逢いに来て欲しいと願うの 幸福と絶望の明らかな境を いともたやすく跳び越したふたりの過ちは今になって 許されてはいない