夜の香り 雨が引いていく 暗い部屋で息を吐いている 笑った顔が板についている 彼ら どこか先を見ている 妄想に耽って 長針が戻ってくる 何も言わないで おもむろに背を向けゆく君はだれ 最高の幸福まで 光のたもとまで きっときっと 終わらない(おわんない) わだちに咲いた花 絡みつく根をほどいて まだ まだ想いは消えぬまま 開く 窓際 顔を出した 木漏れ日はやさしく 何も知らないでいることの 怖さを知る君はだれ ただそっと 手を合わせて問う 静寂は心地よく肺に満ちて それでも小さな猛毒の小瓶を 携えたまま 歩いていく 悔恨も 背負ったままで(しょったままで) その全部を捨てないで きっときっと泣かない わだちに咲いた花 枯れ落ちても色めいて まだ まだ 終わらない(おわんない) 旅の終着点まで いつか帰る場所へ 一歩 一歩刻んだ わだちに咲いた花 やがてその実を結んで ただ ただ そこに或った 夜の香り 花が咲いている 暗い部屋で息を吐いている