時計台のある街に、 歌うことが大好きな 少年が住んでいました。 弱虫な少年は、 自分の声に自信が持てず 人前で歌うことができません。 それを見た博士は毎晩眠りもせず、 少年のために作ります。 コトバとメロディーを 教えるだけで、ほら。 思い通りに歌う魔法のロボット。 「キミが作った音楽を ワタシが歌い上げるよ」 目を丸くした少年はおそるおそる、 ボタンを押しました。 少しだけ不器用な声だけど、 夜空に響いたその声は 確かに少年の心に届いていました。 届いていました。 その日から少年は毎晩眠りもせず、 ロボットのために作ります。 コトバとメロディーを 教える度に、ほら。 幸せそうに歌う魔法のロボット。 「ボクが作った音楽を 誰かに聞いてほしくて」 目を光らせた少年はおそるおそる、 ボタンを押しました。 少しだけ不器用な声だけど、 世界中に響いたその声は 確かに人々の心に届いていました。 届いていました。 「いつまでもキミの歌を…」 いつしか季節は過ぎ去って、 少年も大人になりました。 あの時、教えてくれた歌。 ワタシは今でも覚えているから。 少しだけ不自然な声だけど、 夜空に響いたこの声は 今でもキミのその心に 届いていますか? 届いていますか? 「ワタシの歌声、 聞こえていますか」