足元の鏡には 詩集1つ携えて 走り出す その姿は 君みたいだね 窓辺から見えるのは 朧げに揺らぐ定義 雨音に囲まれたまま 芒種は過ぐ 雨の音も 空の色も 語るには及ばずに 君の声も 何もかもが 滲んで沈みゆく 手にしては消えゆく 筆跡を探して 囚われた君の声も 解らないままでしょう 捉えては零れる 雨粒を集めて 傾向線を辿りながら Pétrichor ひとりだけ 待ちわびた 今日も雨 Le chant de pluie 坂を越え 紫陽花にも気付かないまま 夏はもうすぐ 花の色も 庭の土も 私の戯曲のようで 昨日閉じた栞を取って 詠み進めてみよう 手にしては消えゆく 筆跡を探して 囚われた君の声も 解らないままでしょう 捉えては零れる 雨粒を集めて 蒼穹は彩られた 見上げれば そよぐ風