先刻のカノンが今も耳に痼びり付いている 音色に紛れて微かに聞こえた君の嗚咽も 教室には笑顔と 黒板埋める言葉の数々 寂しさを誤魔化した 変な顔のフォトグラフ 右手の卒業証書は 夢への片道チケットで 別れ告げる紙テープ 桜吹雪の帰り路を君と行く 合わない歩幅を狭めて合わせて せめて今日だけ同じ速度で 「涙 零しても良いのよ こんな日くらい素直に」 君の聲 遥か先を行くようで ひとり立ち止まる 机に彫られた誰にも読めない誰かの頭文字 靴音 感情のまま響く廊下のリノリウム ふたり 想い出を語り合う その美しさを競うように 明日には此処は故郷 桜吹雪の帰り路を君と行く 空に伸ばす手を花が擦り抜ける 別れの言葉 浮かんでは消えた 「去らば 蒼い日々よ エンドロールには君の名前を」 似合わない詩は喉元で解れ 溜息に変わった 桜吹雪の別れ路で君は言う 「またね」って笑顔で 友達のままで まるで明日も逢えるかのように 「さよなら どうか元気で 二度と逢うことはないでしょうけど」 君の跫がそう言っているようで 僕は振り返る 何度も振り返る 夕暮れ 蒼く染めゆく星空 淡く瞬くその光は 何光年の闇を越え 地球にたった今 辿り着いた光 今なら言える「愛している」も 舞い散る初恋の花弁も 今日 僕の旅路に降り注ぐ 掛け替え無き蒼い光