「やっぱり辞めようかな。」 君がぽつりと零した声は、 降り始めの雨のようだった。 「次のコンクールには、 出たかったのに。」 君は僕に気付かないまま、 大事そうにフルートケースを 撫でた。 僕は知っているよ、 誰よりも頑張っていたことを。 心の中で応援していたけれど、 それじゃもう足りないね。 早く言わなくちゃ、君に。 涙を隠して笑わないで。 ブラウスの袖をしまわないで。 今のその想いを、 飲み込んだ感情を、 僕に聞かせてほしい。 二度と君が一人で泣かないように、 どんな道でも明かりを 灯せるように、 そばで見守っていたいから、 【 】を教えてよ。 教室の窓越しに射し込む夕陽が、 悩みながら話す君をそっと包み 込む。 「みんなと吹けるだけで、 楽しかったのに……。 あの頃ずっと気に入っていた曲も、 好きだったのか、 分からなくなっちゃいました。」 どちらを選んだ方が、 後悔しないだろうか? どちらを選ばなかった方が、 後悔するだろうか? 「しかし」より「だから」。 「でも」より「そして」。 点と点を線にして繋げばいい。 前に進まないと、 つまずくことも出来ない。 よく考えて決めた選択肢なら、 AとBどちらでも正解になるから、 行こう。行こう。 君の追い風になりたいんだ。 優しく背中を押せるように。 よく探してみて。答えは君の 【 】にあるよ。 もしも迷った時はいつでも言って。 君の隣で話を聞かせてよ。 焦らずゆっくりでいいから、 【 】 を探して解答に辿り着こう。