日付が変わる瞬間に 画面を伏せたのは僕だった 何も来ないと知るよりも 気づかなかったことにしたくて コンビニ帰りの袋には 明日の朝のパンがひとつ 君の好きだった甘いもの 今日は棚まで行かなかった 忘れてくれて構わない 忘れたふりなら得意だよ 誰に聞かれたわけでもないのに 言い訳ばかりが上手くなる 誕生日なんていらない 君のいない今日に名前はいらない ひとつ歳を取ったくらいで 昨日の僕を追い越せない おめでとうなんていらない 欲しい言葉はそれじゃない 吹き消すものもない部屋で まだ帰らない君を待つ 友達からのスタンプに 笑った顔で返事をした 「いい一年にしてね」って 僕も誰かに送ってたっけ 去年の写真を開いたら ケーキより君が大きく写ってた 何を願ったか忘れたけど 叶っていたことだけわかった 別れた日のことよりも 何でもない日が邪魔をする 冷蔵庫を開けた背中とか 歯磨きしながらした話とか 誕生日なんていらない 君のいない今日に名前はいらない ひとつ歳を取ったくらいで 君より大人になれはしない おめでとうなんていらない 欲しい言葉はそれじゃない 「元気?」のたった三文字で 全部許してしまいそうだ 君の番号は消したのに 指はまだ少し覚えてる 途中まで押してやめたあと 誰かの声が聞きたくなった 窓の向こうで始発が走る 眠らなくても朝は来る 伏せてた画面を裏返す 僕の顔だけ薄く映った 誕生日なんていらない そう言いながら今日を数えてた 君を待つための口実を なくすことさえ怖かった おめでとうなんていらない 欲しい言葉はそれじゃない だけど届いた友達の声に 遅れて少し笑えたんだ 誕生日なんていらない 来年もきっとそう言うだろう 袋に残ったパンを出す お腹はちゃんと空いていた
