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HK1-J-KBS(邪宗門 /北原白秋)

Track byKATARI

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0
  • 2022.02.03
  • 3:52
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歌詞

解纜す、大船あまた。 ──ここ肥前長崎港のただなかは 長雨ぞらの幽闇に海づら鈍み、 悶々と檣けぶるたたずまひ、 鎖のむせび、帆のうなり、 伝馬のさけび、 あるはまた阿蘭船なる黒奴が気も 狂ほしき諸ごゑに、硝子切る音、 うち湿り── 嗚呼午後七時──ひとしきり、 落居ぬ騒擾。 朧月か、 眩ゆきばかり髪むすび紅き 帯してあらはれぬ、 春夜の納屋にいそいそと、あはれ、 女子。 あかあかと据ゑし蝋燭薔薇潮す 片頬にほてり、 すずろけば夜霧火のごと、 いづこにか林檎のあへぎ。 解纜す、大船あまた。 あかあかと日暮の街に吐血して 落日喘ぐ寂寥に鐘鳴りわたり、 陰々と、 灰色重き曇日を死を告げ 知らすせはしさに、 響は絶えず天主より。 ──闇澹として二列、海波の鳴咽、 赤の浮標、 なかに黄ばめる帆は瘧に── 嗚呼午後七時──わなわなとはため く恐怖。 嗚呼愉楽、朱塗の樽の差口抜き、 酒つぐわかさ、 玻璃器に古酒の薫香なみなみと…… 遠く人ごゑ。 やや暫時、瞳かがやき、髪かしげ、 微笑みながらなに紅む、 わかき女子。 母屋にまた、おこる歓語…… 解纜す、大船あまた。 ──黄髪の伴天連信徒蹌踉と 闇穴道を磔負ひ駆られゆくごと 生ぬるき悔の唸順々に、 流るる血しほ黒煙り動揺しつつ、 印度、はた、南蛮、羅馬、 目的はあれ、ただ生涯の船がかり、 いづれは黄泉へ消えゆくや、 ──嗚呼午後七時── 鬱憂の心の海に。 空に真赤な雲のいろ。 玻璃に真赤な酒の色。 なんでこの身が悲しかろ。 空に真赤な雲のいろ。

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