さあ悲しみの亡者は湿(しめ)やかに啜り泣き ご覧喜びの亡者が逆さまにほころぶぞ 人生はいつも一人きり分(わか)ち合へないの 一世一代の恋のお相手も行違つたまゝ さあ憎しみの亡者が 苟且(かりそめ)に摩耶化(まやか)して ご覧愛(いと)しみの亡者は 永久(とこしへ)に騙されるぞ 人生はいつも一度きり取り返せないの 最初が最期どんな刻も行当りばつたり ぶつつけ本番の大博打、伸(の)るか反(そ)るか 人生はいつも揺らいでゐる不確かな炎 燃え尽きてしまふぞ、消えてしまふぞ 愛した貴方は誰だつけ思ひ出せないの 縋つた袂は確かにかう憶えてゐるのに さあ何も彼もがいま有耶無耶に闇の中