「ストライーク!」 「やっぱりょーちんが キャッチャーだと投げやすい」 「じゃあ俺がずっとそーたの キャッチャーやってやるよ」 「絶対だぞ!」 「おう、絶対だ!」 「なありょーちん、 俺たち絶対コージエン行こうな!」 「バーカ、甲子園だよ、そーた」 「コージエン、どこの高校だと 行けるのかなあ?」 「だから甲子園だっつーの」 「ラスト一球だ、秋山! ここで決めるぞ!」 「うん」 「締まっていくぞ!」 「ウェーイ!」 「九回裏ツーアウト満塁、 あと一つストライクを取れば 地区大会優勝つまり甲子園。 行ける。ミットは見えてる。 指先の感覚まで研ぎ澄まされてる。 今日の俺の調子なら確実に この球で行けグッ…‼︎」 「秋山⁉︎大丈夫か秋山!」 「ボーク」 「押し出し?そんな…!」 「大丈夫だ。ここを抑えて次の回に まだ。切り替え切り替え!」 「ウェーイ」 「ぐああっ」 「ボーク」 「ゲームセット」 「秋山よ〜!」 「こうして俺たちの夏は終わった。 実力では文句なくエースピッチャー の俺はここ一番で必ず腹痛を起こす それもとびきりのやつだ。 この大会で三年生は卒業し 残った部員たちも俺に愛想を つかして部活をやめた。 でも俺は諦めない!絶対にもう一度 決勝の舞台に立ってみせる。 そして今度こそ…今度こそ 夢の甲子園にグッ…!あぁっ」 「いやモノローグ中にも 緊張して腹痛起こす奴と 甲子園なんて行けるか! もうやめだやめ!」 「待ってくれ井上!俺はお前と 甲子園に行きたいんだ…ああっ!」 「いや、お前はまずトイレに 行ってこいよ!」 いいぞ九門、練習通りできてる。 上出来だ。 でもオレもっと頑張んないと。 みんなに迷惑かけちゃう。 迷惑なんていくらでもかけろ、 後輩だろ。その代わり舞台の今を 楽しめ。オレたちは夏組なんだから うん! 「大体、部員二人でどうやって 甲子園なんて目指すんだよ」 「俺が部員を集める。そしたら 井上も残ってくれるよな!」 「…集められたらな」 「絶対に集める! 俺とお前で、甲子園行こうぜ!」 青い空、白い雲 玉の汗 飛ばせ声 追えよ恋 純も不純も走る燃料 それが俺たちのベースボール オールフォーワン ワンフォーオール 恋のファールチップ 夢にストレート 三球三振 狙うは逆転満塁ホームラン 行くぜ初恋甲子園 一番サード大野仁 野球経験者です 甲子園目指せるなんて夢みたい がんばります 「目指すのが夢っておかしいだろ。 出ることを夢にしろよ」 二番セカンド榎本隆大 チッスチーッス なんか野球ってアオハルじゃね? サクッと行くべ武道館! 「武道館じゃなくて甲子園だ。 武道館もサクッと行けるか!」 三番ファースト上原勇人 自分、引きこもりのオタクなんで 基本お宅に引きこもりたいんで 押忍 「おー、何で入った! お前もなんでコイツ誘った!」 「よろしくお願いします!」 「どうだ井上?このメンバーなら」 「こんな素人ばっかりで 甲子園なんて行けるわけないだろ」 「大丈夫だって、 俺とお前のバッテリーなら」 「よろしくお願いします!」 「うるせえな」 テンテンもくもぴも いい感じじゃーん。 綴さんが当て書きして くれてるからな。 オレ、つづるの当て書き好き〜。 ただ役者に合わせるんじゃなくて、 その先の意味を求められてて。 この役を当て書きされた…意味。 大丈夫。ここで初めてわかることも あるよ、それが舞台、それが、 夏組だから! 「何?アンタたち 甲子園目指してるわけ?」 「うわぁ〜!女子っ!」 「キャプテンどいつ?」 「俺だけど」 「ふーん、入部してあげる 私、鷲宮 光」 「光ちゅわん」 「鷲宮さん」 「光さん、押忍」 「冷やかしなら帰れ。九人 いなくちゃ試合もできないんだ」 「そんなの余裕。明日までに四人 集めてくるから」 「明日⁉︎」 「おなしゃーす!」 「ほらね」 私を甲子園に連れてって そしたらデートしてあげる 私は甲子園に行きたいの フレーフレーみ・ん・な 「しゃす!のわあ!」 「色仕掛けかよ… そんな不純な動機で」 「しゃす!」 「あんたらもかい!」 「いいじゃん井上。理由は なんでも、野球を楽しもう!」 「ほらボサっとしない。甲子園 行くために、練習するわよ!」 「ウェーイ」 「光ちゃん手加減なさすぎ!」 「もう…動けない…です」 「あまりにも筋肉に良すぎて 驚いております、押忍」 「みんなすごく上手くなったね」 「確かに理に適った練習だな。 アイツ…一体何もんだ?」 「さあ、練習試合を組んだわ。 見せて、アナタたちの力。 光を甲子園に連れてって」 「しゃーい‼︎」 「プレイボール」 青い空 白い雲 玉の汗 飛ばせ声 追えよ恋 純も不純も走る燃料 それが俺たちのベースボール オールフォーワン ワンフォーオール 恋のファールチップ 夢にストレート 三球三振 狙うは逆転満塁ホームラン 行くぜ初恋甲子園 「行けー!秋山‼︎」 「ラスト一球だ!来い!」 「行ける!俺たちは強グッ…‼︎」 「ボーク。三塁進塁、 ゲームセット」 「お前、まだそれ 治ってなかったのかよ」 「ごめん、俺…」 「俺はやめる。お前がそんなん じゃ、野球を続ける意味がない」 「待ってくれよ井上!」 「待ってよ。退部は許さない」 「ああ?」 「鷲宮さん」 「アンタたちならって思ったから 私はこの野球部にベットしたの」 「お前の気持ちは関係ない」 「私と勝負して。三球勝負。 一本でもヒットを打てたら 退部を認めてあげる」 「フッ。…わかったよ」 「投球練習は?」 「一球でいい」 「オッケー」 「ストライーク」 「光ちゃん、球はんえ!」 「鷲宮…鷲宮 光!僕らが 子供の頃、天才ピッチャーだって リトルリーグで活躍してた…!」 「行くよ」 「まさかこんなところであの鷲宮 光と対戦できるなんて、な!」 「クゥー!ファウルチップ、 惜しい。ウェイ。次、次!」 「どっちを応援してるんですか! 井上君が打ったら」 「そっか、メンゴメンゴ」 「真後ろへのファウル… バットを上腕二頭筋にたとえると 芯で捉えている」 「いや捉えてねーから あっち行ってんだわ! お前下がっとけ!」 「ウェイ。ナイスナイス」 「ドンマイドンマイ」 「私には理解できない。力があって も資格がない人間がいるのに…。 どうして自分からその資格を 投げ出せるの?貴方にはその力も 資格も、仲間もいるのに!」 「バットの上。鷲宮さん… すごく魂のこもった球だ」 今のはセリフだけど、オレの本当の 気持ち。九門、アンタはもう夏組の MANKAIカンパニーの俳優だ。 オレたちはアンタを支えてやること はできる。でも、立つのはアンタ 自身の足だ。 踏ん張って、踏み越えてこい。 これが舞台だ。 「ストライク、バッターアウト!」 「井上、わかってるよね?」 「ああ、チームに残るよ」 「っしゃー!」 「光ちゃんナイスゥー!」 「鷲宮さん、ありがとう!」 「俺たち、鷲宮さんを絶対 甲子園に連れてくから!」 「ありがとな、目ぇ覚めたぜ。俺が お前を甲子園に連れてってやる」 「カッコつけてるけど、 アンタ三振してるからね」 「すみませんでした」 「井上、フラれた」 「押忍!」 「告ってもねぇわ」 「鷲宮さん…こんな投球を、俺も… 井上!」 「フッ、お前ら!そうとなったら、 練習するぞ!」 「おー‼︎」 「光ちゃん見てて! もう一本バッチこーい!」 「僕は野球経験者だし、男の子だ。 僕にできることはもっとある!」 「野球、分かってきた…面白い」 「みんな野球こんなに…」 「へーいピッチャー、 ぼーっとすんなー!」 「当たり前でしょキャプテン! 甲子園行くんだから!」 「よーし、地区大会、勝つぞ‼︎」 「おおー‼︎」 走り込め 汗を拭え 努力 根性 下心 手を伸ばせ 掴め夢 行くぜ初恋甲子園 「しゃー!」 「みんな、今日までよく 頑張ってくれた。この地区大会 勝ち抜いて甲子園に行こグッ!」 「アッキー大丈夫?お腹それ…」 「待て。こいつは今、 戦ってるんだ」 「何⁉︎秋山!括約筋だ! 括約筋を締め上げろ!」 「具体的!」 「ぐおおおっ!ふぅ〜!」 九門…!自分のトラウマで あんなに笑いが取れるなんて…。 ああ、九門はもう大丈夫だよ。 初舞台なのにすげえ奴だ。 夏組と綴さんには感謝しても しきれねえ。この恩はなんとしても ただ十座さん、ちょっと今本番中 だから引っ込んでてくれ。 お、おい。 「なぁ〜‼︎」 「あぁ〜〜!」 「秋山、お前がそんななら、 俺はやめる」 「え?」 「…僕も、やめる」 「オレも!」 「自分も、引きこもりに戻ります」 「そうだね。私を甲子園に連れてっ てくれるって、あれは嘘だったんだ ね。じゃあ私も」 「待って!待ってくれ!鷲宮さんは 誰よりも野球が上手いのに、 俺たちにその夢を託してくれた。 大野は、榎本や上原に野球を 教えながら、誰よりも沢山練習して 一番伸びた。榎本は携帯見てるフリ して野球の動画を見るようになった し、練習中誰よりも声を出してくれ た。上原は筋肉のバランスが崩れる くらい素振りをしてて、今じゃチー ム一のバットスピードだ。みんな、 凄くこの夏にかけてくれた。キャプ テンの俺が、こんなところで降りる わけない。俺は、俺の球を、井上に 捕って欲しいんだ!」 「腹痛、治まってんじゃねえか」 「え?みんな、わざと…?」 「でもアッキー、すげえオレたちの こと見てくれてたんだね。なんか グッときちゃった」 「出られるね、秋山?」 「(うなずく)」 「行こう、みんなで」 「押忍」 「負けたら承知しない。私を 甲子園に連れていきなさいよね」 「任せとけ‼︎」 私を甲子園に連れてって 自分じゃ叶えられない夢 私は甲子園に行きたいの 貴方たちになら託せる 青い空 白い雲 玉の汗 飛ばせ声 追えよ恋 純も不純も走る燃料 それが俺たちのベースボール オールフォーワン ワンフォーオール 恋のファールチップ 夢にストレート 三球三振 狙うは逆転満塁ホームラン 行くぜ初恋 甲子園 「九回裏、ツーアウト満塁。 あとひとつストライクをとれば 甲子園…」 …やばい熱が上がってきてる。 くそ…あともう少しなのに…。 オレは、まだ舞台を下りたくない… オレはみんなとここに 立ってたいんだ…! 大丈夫だ、オレたちがいる。 見せてみな、アンタの意味。 いけるいける〜。周り見てみ。 相手の目の中に、答えがあるよ。 一緒に乗り越えよう。 「これで行くんだ!りょーちんと、 みんなと…甲子園に‼︎グッ… うおおお!」 「ごめんみんな、俺が…」 「最後まで投げられたじゃねぇか、 壮太」 「りょーちん…」 「最後の球、一番いい球だったよ」 「いい筋肉の躍動だった」 「っつか井上、ここに来て壮太呼び とかカッコつけすぎじゃね? 狙ってたっしょ」 「は?俺は別に」 「おーいお前ら…」 「今日はよくやったよ。最高の チームで最高の野球ができた。 カッコよかったよ!」 「鷲宮さん…!」 「オレ、光が好きだ!」 「呼び捨て?あ、ずるい!俺も!」 「自分も‼︎結婚してください!」 「えっ…あ、じゃあ俺も」 「ちょっと、ねぇちょっと、みんな 待って!俺もお願いします!」 「お願いします!」 「ごめん、私彼氏いるから」 「えええ⁉︎」 「プロ野球選手の松谷大平。 言ってなかったっけ? じゃ、お疲れ!」 「鷲宮さーーん‼︎」 「もう女の子なんて信じない!」 「泣くなお前たち!俺たちには 甲子園があるじゃないか!」 「そうだ!筋肉は裏切らない!」 「俺たちの心の傷をいやしてくれる のは甲子園しかない!来年は 絶対甲子園行くぞーー!」 「おおー‼︎」 ピッチャーは最高潮 乗りこなせ絶好調 バッターも一等賞 勝ち上がれ独壇場 青春やりきれ! イエイ イエイ イエイ! 根性みせたれ! イエイ イエイ! 絶対彼女は譲らない 何があっても諦めない許しても (くれない) 本気その先見えるまで まだやれる行ける さらに飛べると 信じてくれたから 投げるさ(夢の続き) 追いかけて 行こうぜ