桜花(さくら)をさした 黒髪に 漂よう色香 艶やか姿 ひとりの女性(にょしょう)が すがるよに たどり着いたは 綱館 伯母が逢いたい 一念あって 縁(えにし)の糸を たぐりたぐって 訪ね来た もうし この門 開けたまえ 折角ながら 子細あり 七日の内は この門開けず あまりにつれない 仕打ちじゃと よよと泣き伏す 門の前 九夏三伏 玄冬素雪 みずから抱いて 守り育てた 伯母の愛 よもや 忘れは すまいよな 恩ある伯母を 迎え入れ 武勇のはなし 請われるままに これなる唐びつ 蓋あけて 伯母に見せたる 鬼の腕 ためつすがめつ 形相変わり 怒りの鬼は 腕をとりあげ 虚空へと 無念 千万 失せにけり