あの人ならこんな時 なんて思うかな 人影まばらな 夜の山手通り 今更後戻りなんて 格好悪くてできるかよ かと言って前に転ぶ 勇気もなくて どうしたってまたこんなとこまで 来ちまったんだろう さっきからずっと 同じ猫が後を付けてくる 凭れ掛けたガードレール 視界を遮るヘッドライト 明日になるのがただ怖くって 当て所なく 当て所なく それはそれで今夜も 星が奇麗 鼻水混じりの 中野坂上 アスファルトに響く 乾いた靴音だけが 穴の空いたこの胸の隙間に 優しく忍び込んでくる 闇の中で夢見た世界には そもそも居場所なんてなかったのかもしれない ぼろっちぃ電灯に虫たちが群がっている 嗚呼、うっすらとまた空が白んできやがった 破れかけたハーフコート 誰にも言えない野暮な悩み 一人になるのがまだ怖くって 眠れずに 眠れずに あの人ならこんな時 なんて思うかな 人影まばらな 夜の山手通り