呼んでいる 呼んでいる 音もなくかすかな 影もなく 呼んでいる 呼んでいる さあ飛んでおいでと 誰かが 春3月の 晴れた朝 オオカバマダラは 旅に出る 小さな羽の 行く手には 見たこともない 北の空 海を渡れば 山があり 風を抜ければ 雨が降る 命のへさき 擦り減らし オオカバマダラは 越えて行く 続いてる 続いてる 昨日から今日へと とめどなく 続いてる 続いてる 母から子へ永遠の 絆が 10月の森 そよぐ頃 オオカバマダラは 舞い戻る 遠い南の 故郷へ 母の来た道 さかのぼる 迷う子供は 疲れ切り 弱い子供は 落ちかかり それでも力 振り絞り オオカバマダラは 飛び上がる 呼んでいる 呼んでいる 音もなくかすかな 影もなく 呼んでいる 呼んでいる さあ飛んでおいでと 誰かが