サロメは還って 北の夜空を駆ける 溶けてゆく星 たおやかな微風の中に独り 朝の光まぶしくて見えない 銀世界の大地には寂莫 あなたの大きさだけ 白い息を集めて暖もりつくった 血しぶきだけ やけに紅く 殺意をしるし このまま Let it be 地球の中にもぐり 幾億年も積もらせた 枯葉数えていたい 通り過ぎた記憶さえかすんで 今はただ眠る人を見つめて 必ず不幸せを拭いさって 謙虚につぐなうつもりが いつの間にか我慢できず ナイフを握り <Voice> 気がついたら 目の前に血まみれになった 遺骸が横たわっていた ヨハネの命を奪えという声だけが 耳に鳴り響いた ヨハネの命を奪えとだけ聴こえた ヨハネの命を奪えとサロメが言った サロメは還って私だけが残った 雲は海よりも深くそびえて 碧く立たずんだ宙に漂う あなたの影が今も 私の夢現れ乱してゆくから この叫びもこの疼きも 終りはしない 殺意をしるし