夕日の高速道路を マイクロバスが走る 道路の継ぎ目の振動が ケツに伝わる 疲れ果てた体に 失われた希望 誰も喋らへん 沈黙の続く車内 隣では弟が うつむいて泣いてる みんなは俺を ムードメーカーって呼ぶけど この空気を変えんのは どうやっても無理 今日 全てが終わってもうた 弟は昔から要領がよく 上達が早かった 足も速いし 力もあって 体も大きい おとんに勧められて 兄弟揃って始めた野球 3年の俺は補欠やのに 2年の弟はレギュラー 9回裏 打球は右中間に強く転がり 弟のグラブを弾き センターへ抜けていった ランナー2人が帰って 俺らのチームは 逆転負け どんなミスも 声出して ドンマイ ドンマイ ベンチから声援を 送り続けた レギュラーを目指して 練習に耐えてきたけど 俺が声援を 受ける事はなかった バットの代わりにメガホンを 握り締めた試合 気合で勝利を引き寄せようと 枯らした声は 悲鳴とため息に 消された お前はあと1年ある ドンマイ フロントガラスに映る サンセットグラデーション 紺碧を燃やす 鮮やかな鉛丹 おかんが真っ白に洗ってくれた ユニホーム 弟が真っ黒やから 俺も土を付けて汚した 弟がどんどんうまくなり 追いつけなくなって 何度も野球を 辞めようと思ったけど おとんが好きなタバコをやめて 俺ら兄弟に グローブを買うてくれたから 辞めるって言われへんかった 途中で投げ出さへんのが お前のええとこや おとんは俺にいっつもそう言う 俺の守るセカンドを 弟に取られた日 おとんは俺に ドンマイって慰めた 失敗ばっかりで バカにされ笑われる 隣にはいっつも 優秀な弟がおる トムとジェリーで やられっぱなしのトムを見てたら まるで自分を見てるようで 辛い どんな時も 笑顔で ドンマイ ドンマイ 輝くはずの夏は 輝かへんかった 授業中 隠れてボールの汚れを 消しゴムで落とした 古タイヤを押して トンボを引いた日々 練習後に 駆け寄る冷水機 水道水の味 弟を背負い 駆け足で登った坂道 夕日が落ちれば 全てリセットされる 涙を拭けや ドンマイ 輝くはずの夏は 輝かへんかった 授業中 隠れてボールの汚れを 消しゴムで落とした 古タイヤを押して トンボを引いた日々 練習後に 駆け寄る冷水機 水道水の味 弟を背負い 駆け足で登った坂道 夕日が落ちれば 全て リセットされる 涙を拭けや ドンマイ 顔を上げろ ドンマイ