あれは二月の寒い夜 やっと十四になった頃 窓にちらちら雪が降り 部屋はひえびえ暗かった 愛と云うのじゃないけれど 私は抱かれてみたかった あれは五月の雨の夜 今日で十五という時に 安い指輪を贈られて 花を一輪かざられて 愛と云うのじゃないけれど 私は捧げてみたかった あれは八月暑い夜 すねて十九を超えた頃 細いナイフを光らせて にくい男を待っていた 愛と云うのじゃないけれど 私は捨てられつらかった あれは何月、風の夜 とうに二十も過ぎた頃 鉄の格子の空を見て 月の姿がさみしくて 愛と云うのじゃないけれど 私は誰かがほしかった そうしてこうして暗い夜 年も忘れた今日のこと 街にゆらゆら灯りつき みんな祈りをするときに ざんげの値打ちもないけれど 私は話してみたかった