何もない ただ静寂だけが横たわる こんな夜は君のことを思い出す 果たせずに擦り切れた 最後の約束と 君の最後の言葉が まだ鳴り止まない 手と手を繋いだはいいけれど 僕等はそのほどき方を知らずに あとひとつでも何かが 違えばもっと楽に離れられたね 最終列車の鐘が響く 行き交う人波に 君を探してしまう あの日 僕に強さがあれば 寄り添う二人のように 居られたのかな 僕が吐いた嘘 きっと君は知っていて 何もかも押し殺して 笑っていたの? 待ち合わせの時刻は過ぎ去り 垂れ込む夜が全てを染めていく 静寂に刻む針の音 気付けば僕はもう 走り出していた 最終列車の鐘が響く 見慣れた姿はどこにも 見つからなくて 君がまだ待っているはずが ないなんて そんなこと分かっていたのに 窓越しに見えた長い黒髪 叫んだ声を車輪が奪う 最終列車は君を連れて 僕の追いつけない処まで 駆け抜けていく ―あの日 君のいた窓際 列車は追想ごと乗せ夜を行く