サタン 「うん、うんうん。 うーん。ふっふふっ、 やっぱりおもしろいな、この本」 サタン 「なんとか、 この王立図書館で借りられてよかっ た。すごく人気で、 どこにもなかったからな」 ルシファー「ん?サタン」 サタン 「…え…、 ルシファー…!」 ルシファー「偶然だな」 サタン 「ちっ…」 ルシファー「何を読んでいるんだ? 」 サタン 「…何でもいいだろ」 ルシファー「ちょっと失礼」 サタン 「うわっなんだよ、 覗き込んでくるな」 ルシファー「おぉ、この本、 俺がちょうど読みたかったヤツじゃ ないか」 サタン 「え?」 ルシファー「人気でなかなか借りら れないんだ。隣に座って、 俺も一緒に読んでもいいか?」 サタン 「は!? 1冊の本を2人で読むのか…!?」 ルシファー「そうだ」 サタン 「ダメに決まってんだろ!なんでお 前と2人で…」 ルシファー「おまえに拒否権はない ぞ。先週、 ベールが大騒ぎした冷蔵庫からプリ ンが消えた事件…」 ルシファー「犯人は実はおまえだと ばらされたくないだろう?」 サタン 「うっ…!ク、 クソー…!汚ねぇぞ!」 ルシファー「しー!図書館では静か に。じゃあ、 横から覗かせて貰うぞ」 サタン 「うぅ…」 ルシファー「もうけっこう読み進ん でいるな」 サタン 「まぁな」 ルシファー「これまでのあらすじを 教えてくれ」 サタン 「はぁ…!? なんでわざわざそんな…」 ルシファー「しー!図書館では静か に」 サタン 「ちっ、クソ…。はぁ、 主人公がいて、ある日、 どっかのだれかと恋に落ちました… 」 ルシファー「サタン!」 サタン 「いや怒りたいのはこっちだよ。 何であらすじなんか言わないと…」 ルシファー「おもしろいじゃないか 。早く続きを読むぞ」 サタン 「グッときたのかよ。 こっちは意地悪でテキトーに言った のに…」 ルシファー「ページをめくる担当は 任せろ。 読ませて貰ってる身だからな、 それくらいはする」 サタン 「ふん、勝手にしろよ」 ルシファー「よし、 じゃあ読もうか」 サタン 「ちょっちょ、ちょ、 ちょっちょっと、早過ぎ!」 ルシファー「すまん。 なぜか物語がすいすい入ってきて止 まらないんだ」 ルシファー「もう一度ページをめく る担当をやらせてくれないか?」 サタン 「しょうがねぇなぁ…」 ルシファー「よし、 じゃあ読もうか」 サタン 「ちょ、ちょ、 ちょっちょっと待て、 待って何も見えない… 何も読めない、ストーップ!!」 サタン 「もうページめくることが目的にな ってない?本は文字を読むものだぞ? 」 ルシファー「なんて切ない物語なん だ…」 サタン 「把握してんのかよ、 内容!」 ルシファー「よしじゃあ、 続きを読むぞ」 サタン 「いやちょっと待てって!」 サタン 「ちょ、 だから早いって!」 サタン 「ちょ、ちょっちょっと、 てかよくそんな早くめくれるな!手 首どうなってんの?」 ルシファー「くぅ、う、う、 うう… おぉう、おお、おぉ…」 サタン 「ちょっと辛そうじゃねぇか…!」 サタン 「うわ!全部めくり終えた!」 ルシファー「いやぁいい話だった」 サタン 「で、 やっぱちゃんと読めてんだよなぁ。 どうなってんのおまえ…!?」 ルシファー「主人公とパートナーが 結ばれることはなかったが、 主人公の成長が感動的だな」 サタン 「うわもう俺、 オチ知っちゃったわ」 ルシファー「何度読んでもいいな、 この本は」 サタン 「何度読んでも?」 ルシファー「どうやら俺は、 この本を一度読んだことがあるよう だ。じゃあな」 サタン 「え、 だから物語の理解が早かったのか… 」 サタン 「ってじゃあ、 俺がネタバレされただけじゃねぇか !!」 サタン 「あっやば。 図書館では静かに…」