あれはあたしがまだ8つの頃の話 パパとママと行った夢の動物園 大きなキリンが欲しくって 泣いた そんなあたしにパパが与えたのは とても可愛らしいコアラの女の子 作り手の過ちで口がないから 何も言えない女の子 スピーナ それを両手に抱えてみつめるあたしに パパが言ったのよ 名前はスピーナ あなたに服は似合わない 脱がして捨ててしまいましょう 裸になったあなたを抱くと ひとつになれた気がしたわ あたしのスピーナ 眠れない夜も 何も言わず ただ側にいてくれた あたしのスピーナ その目にあたしが映るたび想う ちいさな二人の部屋 裸のあなたを見て ママが言ったわ "お洋服なくしちゃったの? じゃあ作ってもらいましょう" 親戚のおばさんがあなたの服を それはたくさん作ってくれたわ "でも全部 捨てちゃった" どうしてとママは怒るけど じゃあママ どうしてわからないの? そのままの美しさを… あなたのことは あたしが 一番よくわかってるのよ 守るように抱いた時 あなたの声が聴こえた気がしたわ あたしのスピーナ 声にならない声が響くのは 幼い子宮に あたしのスピーナ その鼻に耳に キスをしたら いいこね 瞼を閉じて あたしのスピーナ あたしが死ぬ時は あの部屋を思い出してね あたしのスピーナ そして新しい 淋しがりの誰かを幸せにしてあげて