間違いなく、The Wantedは今、これまでの人生で最高の時を謳歌している。特大ヒットとなった全英ナンバー1シングル「All Time Low」のリリースからわずか1年、英国で最大かつ最高のポップ・グループとしての地位を既に確立し、最大限に甘く見積もった予想すら遥かに凌駕した彼らは、正に夢の中で生きていると言える。しかも親友たちと一緒に、だ。超多忙なスケジュールの中、たゆまぬ努力を重ねつつ、その一瞬一瞬を心から楽しんできた彼らは、これまでにアンセミックな5枚の全英トップ5シングルを世に送り出し、うち2枚で全英1位を獲得してきた。またYouTubeでは3,000万回という驚異的な再生回数を記録し、グループと同名のデビュー・アルバムの売上げは40万枚を突破。2010年10月に発売された同アルバムが、英ポップ・ミュージック界を根底から揺るがす事態を引き起したことも記憶に新しい。あれから1年、The Wantedは今回待望のセカンド・アルバムを引っ提げて、再びチャートを震撼させようとしている。これは堂々たる壮大なポップ・アルバム、幸福感に満ちたワイドスクリーンな傑作だ。
驚異的な1年を過ごした2011年。その1年でThe Wantedは、ポップ界に重大な影響力を与える存在となっていた。激しいほど病み付きになるそのチューン、固く結ばれた友情、そして少し荒っぽい魅力とで、彼らは典型的なボーイ・グループの枠組みを打ち壊し、英国のポップ・ミュージック界が待ち望んでいた、新鮮な風を吹き込んだ。それに応じた称賛もまた、後からついてきている。例えば2月のブリット・アウォーズでは、最優秀UKシングル部門に「All Time Low」がノミネート。『ビハインド・バーズ・ツアー』と銘打って3〜4月に行われた全英ツアーは、全公演ソールドアウト。4月には、米国の名門レーベルDef Jamと契約。7〜8月には、iTunesフェスとVフェスに出演し、Vフェスのビッグ・ブルー・テントでは、1万5千人の超満員のオーディエンスに大歓声で迎えられ、セットを披露。彼らのパフォーマンスは、多くの観客から同フェスのハイライトに選出された。かつて怪しげなナイトクラブでのライヴやスクール・ツアーで英国全土を回るという経験を積むことから出発したグループが、こういった全てを成し遂げたのである。特筆すべきは、この5人が夏の間に、隣り同士で共同生活をしていた南ロンドンのフラットから引っ越しをする時間を見つけたこと。彼らはドラマ『フレンズ』さながらの和気あいあいとした生活を、ジェイのペットのトカゲ、ネイティリと一緒に送っていたのだった。現在彼らは、それぞれ10分圏内の場所に独立して生活。マックスは今、婚約者のミシェル・キーガン(ドラマ『コロネーション・ストリート』出演女優)と暮らす家を物色中だ。「要するに、僕らも大人になったってことさ」と、マックスは微笑む。
その変化は、彼らのサウンドにも歴然と表われている。今回、The Wantedは、現在のポップ界で主流となっているダンス・フロアのスリルを抽出しつつ、そこに彼ら独特の味わい深いヒネリを加味。テイク・ザット第二世代の映画的なメロディを、メンバーそれぞれが個人的に受けてきた音楽的な影響と融合させたこのアルバムは、歴史的名作のように聴こえると同時に、"今"という時代を色濃く反映した作品となっている。だが彼らは、「All Time Low」ではややコールドプレイ風でありながら、B面ではExampleによるレイヴ・ポップの名曲「Kickstarts」をカヴァーしているようなグループなのだから、それも当然なのではなかろうか?
『Battleground』は間違いなく、魅惑的な大人へと成長を遂げた、本物のポップ・グループならではのサウンドを響かせているアルバムだ。本作は、英米の両国でレコーディング。イギリスでは、プロデューサーを務めたスティーヴ・マックのロンドンにあるスタジオで、そしてアメリカでは、ハリウッド・サイン(※カリフォルニアのサンタモニカ丘陵リー山の一角に設置されている、『HOLLYWOOD』という文字の有名なロゴ)を臨む、シンガー・ソングライターのダイアン・ウォーレン所有のLAのスタジオで録音が行われた。「彼女(ダイアン)は"悪の天才"なんだ」と笑うジェイ。「そして僕らが向こうで会った中で、最も"リアル"な人だったよ」。メンバーが今回共に作業をしたのは、多彩な鬼才プロデューサー陣だ。ゼノマニアのブライアン・ヒギンス(ガールズ・アラウド、ペット・ショップ・ボーイズ、カイリー)から、長年彼らと"ドリーム・チーム"を組んでいるスティーヴ・マック(JLS、ローナン・キーティング、レオナ・ルイス)、ウェイン・ヘクター(シェリル・コール、ブリトニー・スピーズ、The Wantedの「All Time Low」)、エド・ドレウェット、そして高い評価を受けているシンガーソングライターのジャック・マクマナス(グルーヴ・アルマダのかつてのコラボレイター)に至るまで、実に幅広い顔ぶれである。
何より顕著なのは、彼らが曲作りやプロダクションにおいても、自分達の独自性をそこに注入する自信を得たということだ。彼ら ー つまり、音楽に対してめまいがするほど情熱的な、5人の若者達 ー が今現在聴いている音楽が、今回のアルバムには反映されている。
「ファースト・アルバムの時は、自分で思っていたよりも、僕らは(制作に)携わった。でも今回はほぼ全曲を、共作しているか自分達で書いているんだ。 歌詞や曲、その他もろもろを引っ括めてね」と、見るからに嬉しそうに、笑顔を浮かべるジェイ。「ご存知の通り、音楽は年々変化しているし、僕らはその時その時に自分達が良いと思う音楽を取り入れてきた。だから以前にはなかった要素が、今回のアルバムにはある。グランジーなダブステップ・ポップもあるし、すごくダークなやつもあるし、とにかく壮大なものもあるんだ」。
その全てが、世界に通用するワールド・クラスのコンテンポラリー・ポップ・ミュージックだ。たとえば既発のシングル2曲:ワクワクさせられるエレクトロ・レイヴ「Gold Forever」(『コミックリリーフ』(※英国で毎年3月に行われる、芸能人によるチャリティ企画)用にレコーディングされ、2011年3月に全英3位)と、そして全英1位に輝いた、夏を彩るモンスター・ユーロポップ「Glad You Came」のうち、後者についてジェイは「僕らの置かれてる状況が変わりつつあること、どんどん大掛かりになっていってるってことを実感した」瞬間だったと語っている。ラジオ局巡りのプロモーション・ツアーでは、「聴取者から次々と『これこそ、この夏のテーマ・ソングだね!』っていうメッセージをたくさん受け取ったんだ」と、マックスが付け加える。同曲のリリース以来、The Wanted ・フィーヴァーは、明らかにギアを高速にチェンジした。彼らの爽快なアンセムは、ダンスフロアとラジオのエアプレイとの両方から同等に支持され、誰の目から見ても分かる通り、彼らは現シーンで最も旬なグループの地位を獲得したのである。
『Battleground』が恐らく今年を代表するポップ・アルバムとなることに、何ら疑問の余地はない。元気が出るエレクトロ・ポップ「Invincible」から、苦悩に満ちたストリングスが響く「Warzone」、そして脈動するエレクトロニクス「Mad Man」まで、本アルバムは壮大な独特の雰囲気と、彼らの独自ブランドである未来派ポップの強い高揚感との間を、予想を裏切りながら縫うように進んでいく。後者を代表するのが、驚くべきニュー・シングル「Lightning」だ。また歌詞的にも彼らは成長を遂げており、今回は恋愛の喜びと裏切りの両方を、同等に描き出している。「単なる、"僕は君を愛してる/君も僕を愛してる"っていう曲じゃないんだ」と指摘するトム。「そこにはリアルなものがあるんだよ」。
The Wantedにとり、今や世界制覇が確実に手の届く所まで来ているということは、何よりも明らかだ。2011年秋、彼らはこの地球上で最も有名なティーンエイジャーことジャスティン・ビーバーの南米ツアーをサポートすることにより、その可能性の実現へと更に一歩近づくことになるだろう。全公演ソールドアウトとなっているその南米ツアーには、12万人の観客の前でステージに立つ、10月のサンパウロ公演も含まれている。The Wantedは2011年3月のロンドンO2アリーナ公演で、カナダ出身のポップ界の大スター、ジャスティンをサポート。その後、自らThe Wantedのファンを公言するジャスティン自身が、個人的に彼らに南米ツアーのサポートを依頼したのだった。「ブラジルのファンはね、」と、ジェイ。「伝え聞く所によると、もう大興奮なんだって」。「いつもより2人多く、ボディガードを増員しないとね!」と嬉しそうなシヴァ。「それから、防弾ガラス入りのワゴン車もだ!」と驚いてみせるネイサン。これはまだほんの手始めだ。2012年初頭、The Wantedは、3月のロンドンO2アリーナ公演をクライマックスとする初の全英アリーナ・ツアーに乗り出す。その後は、アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリアへ。言うまでもなく、彼らはとにかくツアーに出るのが待ち切れない様子だ。これこそ、彼らがこれまで必死に努力して目指してきたもの、彼らが望んできたものであり、自分達が想像していた以上に楽しいことだと分かってきたのである。
「いつかこういった全てを振り返って、『僕は仲間と一緒に世界中を旅してきたんだ』って言いたいんだよね」と目を大きく見開きながら、優しげなトーンでマックスは語る。「一生の友達ができただけじゃなく、僕らは他の人がほとんど誰もやれないようなことを成し遂げてきた。つまり、音楽で世界中で成功を治めるということ。僕は絶対にそれを忘れないよ」。
では、グループの各メンバーについてご紹介しよう。
マックス(Max):
マクシミリアン・アルベルト・"マックス"・ジョージ(Maximillian Alberto George)。1988年9月6日、マンチェスター生まれ。坊主頭。緑/ヘイゼル色の瞳は、銀河の月のサイズ。大のサッカー・ファン(マンチェスター・シティのサポーター)で、元サッカー選手。男っぽいのに、女の子のように涙もろい。「グループ内で一番男らしいメンバーが僕だって? 多分ね! でも実際は、メンバーの中で僕が一番心優しいんだよ(と、トムの膝を優しく撫で始める)。映画を観て、僕みたいに泣く奴は他に見たことないな。そのくらい僕は女々しいんだ、特に動物に関してはね。子供の頃、ジョーズが死ぬのを観て泣いたことがある。『疫病犬と呼ばれて』(原題:The Plague Dogs)っていう古いアニメ映画を観た時は、胸が張り裂けそうだった。立ち直るのに一週間かかったよ」。本質的に伝統を重んじるマックスは、「家族思いの男。家族とはすごく仲良しなんだ」。彼は常に、結婚の大切さを信じてきた。「ていうか、いつも結婚のことが頭にあるってわけじゃないけどね、へへへ! でも、うん、いつも家族に重きを置いてきたよ」
シヴァ/シーヴァ(Siva):
シヴァ・ケインズウォラン(Siva Kaneswaran)。1988年11月16日、アイルランド生まれ。アイルランドとスリランカのハーフ。髪はエルヴィス風、顔立ちは彫刻のブロンズ像のよう。16歳でモデルを始め、モデル事務所ストーム・エージェンシーと契約。"美の業界"が彼に教えてくれたこととは:「(外面は)美しいのに、内面が全く美しくない人々がいるということ。それは間違いないね」。「Glad You Came」の完成版を初めて聴いた日(ネイサンの18歳の誕生日に行われた、それ以外は「退屈だった」会議の席)で、彼はあまりにたくさんのシャンパンを飲み過ぎて、ジェイ曰く(まるでハリケーンの中、綱を解かれて激しく揺れているヨットのように)「フラフラになってた!」そうだ。オフの時間はずっと自宅スタジオで過ごし、曲作りやレコーディング、あるいはギターを掻き鳴らしたりしているシヴァ。アイルランド訛りの優しい口調で話す彼は、見かけによらず穏やかだ。ジェイ曰く「シーヴは、すごく地に足が着いてるんだ。腰が低くて、すごくクリエイティヴ。それから彼が持ち込んでくれてるのは、バランス感覚と文化。そしてフルートの音色のような歌声と、緑色のミニクーパーもね」
ジェイ(Jay):
ジェイムズ・"ジェイ"・マクギネス(James McGuiness)。1990年7月24日、ノッティンガム生まれ。10歳の少年のような巻き毛に、繊細な詩人のような顔立ち。13歳の時にダンス教室に通い始め、ミッドランド・アカデミー・オブ・ダンス&ドラマ(略称はMADD。素晴らしい)を2009年に卒業。お喋りが大好き。ビデオ撮影などの時に「アルマーニのモデルみたいに襟をいじったりするのって、なんかちょっとマヌケだよな」と感じることがあるという。動物が大好きで、トカゲを飼っている。PETA(動物の倫理的扱いを求める人々の会)により『2011年度、最もセクシーなベジタリアン男性』に選出。O2アリーナでジャスティン・ビーバーをサポートした際、「ベジタリアン用のごちそうが用意されてたんだ、美味しかったな」と、嬉しそうに語る。BBCの長寿音楽番組『トップ・オブ・ザ・ポップス』の終了を嘆くジェイ。「昔は『トップ・オブ・ザ・ポップス』に出ることが重要だったけど、今は朝の情報番組や『Xファクター』に出演することだからね。一度、ゲストとして出たことがあるけど、新たな『トップ・オブ・ザ・ポップス』を 数百万倍した感じ。他の番組じゃそんな視聴率は得られない。笑えるよね!」
トム(Tom):
トーマス・アンソニー・"トム"・パーカー(Thomas Anthony Parker)。1988年8月4日、ボルトン生まれ。髪型はブリットポップのギタリスト風。顔立ちは『ジレット、それは男が手にできる最高のもの』の広告モデル風。オアシス/ステレオフォニックスの大ファンで、16歳の時からギターを弾いている。マンチェスター・メトロポリタン大学で地理学を専攻。テイク・ザットのトリビュート・バンド、テイク・ザット2でマーク・オーウェン役を務めるため、中退。だがマーク・オーウェンには全く似ていない。「テイク・ザットのメンバーに似てる奴は誰もいなかったよ。『歌える? なら決まりだ!』って感じでね(と、吐息混じりの高音ヴォイスで歌い始める)『ベーーイビー、僕はー戻って来たよ!』。ハワード役をやったこともあるんだ」と言って、『絶っっっ対にー!忘れなーいで、自分達の出発点をー!』(と、首元に5フィートの断熱材を巻いているかのように歌い始める)。ゲイリー役をやったことはないけどね、僕はそこまでうまくなかったから」。マックス曰く「トムを止めるのはムリ。彼のスイッチはオフにできないんだ。僕らは15時間ぶっ通しで仕事をした後、家に帰ったりすると、『もう自分達に関わりのあるものは何も聞きたくない。携帯の電源も切るし、ツイッターも、何も見たくない。とにかくリラックスしたい」ってなる。でもトムの場合、折り返し連絡してくるんだ、(世界一強烈なボルトン訛りで)『なあ! 視聴回数が350万回を越えたよ! ツイッターでみんなが何て言ってるか、チェックしてみなよ? メキシコではトップ10入りしたって』とか言ってね」
ネイサン(Nathan):
ネイサン・ジェイムズ・サイクス(Nathan James Sykes)。1993年4月18日、グロスターシャー生まれ。www.lesbiansthatlooklikejustinbieber.com("ジャスティン・ビーバー似のレズビアン女性達")というウェブサイトに登場する人々の顔立ちに似ていることを、自ら認めて憚らない(不思議なことに、ロビー・ウィリアムスの10代の時の目元も掲載)。11歳の時、シルヴィア・ヤングのシアター・スクールに入学。毎日、朝5時起きの通学に耐えた。2003年の『ブリトニー・スピアーズ・カラオケ・クリスマス大会』を含む、複数の歌唱コンテストで優勝。皮肉の名人で、表情も変えずにサラっとユーモアを口にする。彼のとんでもなく失礼な軽口は、家族向けのメディアには載せられないレベル。ジェイ曰く「ネイサンはピアノが素晴らしく巧くて、歯並びがとても奇麗なんだ」。ネイサン曰く「差し歯じゃないよ!」。マンチェスター・ユナイテッドの熱狂的サポーターで、ソウルやR&Bミュージックを愛聴。The Wantedのセカンド・アルバムのタイトルは『Alan』にしたいと、真剣に考えていた。
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