‘故郷は上州三日月村。貧しい百姓暮らしに愛想を尽かし家を出たのが十の時。以来旅から旅の浮草稼業。丁だ半だの博打打ち。切ったはったのヤクザな稼業。所詮は道連れ無しの一人旅。生涯無頼の渡世人でござんす’
‘ござんすってオジサン。格好もそれなら口ぶりまでなりきってるねえ。長い楊枝咥えて。あれでしょ?木枯らしなんとかっていう’
‘木枯らし?…あっしにゃ関わりのねえことでござんす’
‘あーそれそれ。決まり文句出ました’
‘なんのことやらさっぱり’
‘オジサンその刀見せてよ。随分年季が入ってるみたいで渋いねえ。その刀で何人ぐらい斬りなすったんでござんすか?’
‘そう…斬った悪人どもは数知れず。斬っても斬ってもキリがない。世の中の悪人って奴は次から次へと地獄の釜から這い出して来るんでござんすよ’
‘うーん確かに。ニュースなんか見ててももうとんでもないヒトデナシだらけよ世の中。斬っても斬ってもキリがないよほんとに。いっそのことオジサン政治家にでもなれば?あ。住所もないんじゃ選挙出れないか?あはは’
‘政治家…?。あっしにゃ関わりのねえことでござんす’
‘出ました。そう来ますね?やっぱり。あれ…?中村敦夫?’
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