悪魔が方向指示盤の上で君を見て憐れんでいる。君もさっきからそのことを知っている。後ろに走り去る情景の中、奴だけが流れず、バイザーの端にその姿が見える。ポールの下を走り抜けるたびに奴はそこに見えて来る。哀しみをたたえた目で口の端を大きく上げて、喉の奥で笑いを耐えているんだ。走り続けなければならないんだ。だいぶ前に逃げるように家を出た。その時に悪魔と契約した。それから奴の荷を行き先も分からないまま乗せて走り続けている。もうすぐ懐かしい街に入る。でも、そこで止まることは無い。道が流れて行くように僕もそこに流れて行く。怖いのは、その街で君を見かけることだ。それは間違えなく必ず起きる。何故ならその時、喉の奥から悪魔の笑いがほとばしるのだ。僕の心が砕かれ、視線がさ迷う時。その瞬間を待っている。憎しみで見上げると奴はもういない。こうして走り続けたまま、朝日に魂を浄化され夕日に呪われる。蝕まれた精神をグリップで支え、肉が渇いて骨が浮き出て来る。髪はとうに頭に白く貼り付き、悪魔が仕立てたスーツとブーツが樣になってきた。もう僕はゴーストライダー。人で無い身体にひとの心を抱え、走り抜ける。海と山だけが一筋の心の傷を癒してくれる。もし、君が帰るところを探して走っているなら、必ず僕は君の後ろにいる。この呪いの荷を君に託すため。
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