男は彼女と二人で全裸でバルコニーに立って外を眺めている。二人サングラスをかけて、特徴といえば男の髪の毛はパーマにまみれている。彼女は金髪といった具合。天気は気持ちがいい程の青空。下には道路と立体駐車場の出入り口にある螺旋道路が窮屈そうに駐車場に張り付いているのが、見えている。てことは、そこからバルコニーの二人は丸見えという訳。でも外から二人は見られても気にならない。さっきやるべきことはベッドの上で済ませた。本を読むように、テーブルに置いてあるコーヒーを手に取って飲むように自然と始まり、唐突にその時を迎えて終わる。終わってしまえば、そこで何も考えるようなことはない。だから男は何気なくキッチンからベッドをスルーしてバルコニーに出てペぺロンチーノを食べている。クーラーの室外機には冷えた缶ビールが乗っている。隣にいる彼女にフォークで時々パスタを口に入れてあげて、彼女がモグモグやっているのを何も考えず見ながら、改めて外を見るのだ。済ますべきことを済ませてしまうと、ぺニスもヴァギナも意味を為さず。世界はスロープを降りる、家族を満載したSUVのように何らかの意味を乗せて無意識に流れてゆく。単にこの世界の大きな慣性によって時間が流されていると勘違いしたくなるような馬鹿さ加減で、このバルコニーに二人は裸でいる。ことを済ました二人の慣性の流れで世界はペペロンチーノを食べるのである。今日、世界は暖かなオレンジ色の日差しをバルコニーと駐車場に満たしていた。男はその日差しの具合が気に入ったので久しぶりにここで煙草でも吸おうかと思った。でもこの彼女の部屋には1カートン程のライターはあっても1本の煙草すらないのだった。
…もっと見る