ランドスケープのポートレート

「失ったものの痛みを解消するのは難しいです。」訥々と彼は言いました。そこで、人は無くした何かの反対側に別なものを置いて、心のバランスを取るのです。それも、論理的にはバランスを得ないものを置くのです。例えば、お金。お金をなくした…。それに対する何らかの確証を得なくてもそこには人物が出てきます。盗った奴、騙した奴、もしも落としたとしても、奴が話しかけなければ、奴があの用事を押し付けなかったら、という感じです。本来的にお金をなくしたなら、奴から取り戻すのは無理だし、盗ったとしても難しい。失ったものは失っただけ、失われたままなので代わりに何か別な異物のようなものを次々とそこにねじ込む。気がすむまで。ところで、私は、左耳の聴力を失った。その時は、神さまに頂いた耳を神さまに返して、耳が必要な別の人に神さまが授けた、と考えました。。次に左肩を痛めて左肩から下が動きが悪くなり、今は左瞼が腫れている。一体私はこの右の端に何を置いたらいいのか途方にくれているのです。何故なら、神さまはもう用済みだからです。