俺が覚えている聖書の一節に この状況にピッタリのやつがある。エゼキエル書 25章 17節 だ。
「心正しき者の歩む道は、心悪しき者の よこしまな利己と暴虐に 阻まれる。
愛と善意の名の下に 暗黒の谷で 弱き者を導く者は 幸いなり。
なぜなら 彼こそは真に同胞を守り
迷い子を救う者なり。
そして我は、同胞を汚し 滅ぼさんとする 汝に
大いなる復讐と 激怒の鉄槌を下す。
我が汝に 報復をなすとき、
汝は 我こそ 主と 知るであろう」
映画『パルプ・フィクション』で 組織の殺し屋 ジュールス ( サミュエル・L・ジャクソン ) が、殺しをキメる前に言うセリフです。
批評家は この聖書の引用に《贖罪》など 神学的なテーマを見出そうとしました。
でもこれは、エゼキエル書の一部に タランティーノ監督が好きな 千葉真一主演の『ボディガード牙』(73年) の英語版の字幕に出た 言葉を混ぜたものです……
『レザボア・ドッグス』(92年) 一本だけの新人監督の ディープなギャグでした。
悪ふざけですね😁
『パルプ・フィクション』は、1994年5月 第47回 カンヌ国際映画祭 で グランプリのパルム・ドールを獲得しました。
その後、全米で10月14日 ( 日本では 10月8日 ) に公開されると、
製作費 800万$のこの映画は、
アメリカ国内で 1億792万$
全世界で 2億1392万$ を稼ぐ 大ヒットになりました。
第67回 アカデミー脚本賞 をクエンティン・タランティーノとロジャー・エイバリー で受賞したのを始め
ゴールデン・グローブ賞など 多数の賞を獲得しました。
賞だけでなく、世界各地の映画人に影響を与え 『パルプ・フィクション』もどきの、だべって クールにドライに 拳銃をバンバン撃つ 映画を溢れさせました。
元々は、タランティーノとエイバリーが持ち寄った 三話の『ブラック・マスク』という題のオムニバス映画の企画でした。
タランティーノは三つの話を 互いにリンクさせ、ひとつの物語にする事を考え エイバリーから《八百長を拒否するボクサー》の話を買い
「ありきたりの話を ありきたりじゃない やり方で映画にするんだ」
と『パルプ・フィクション』にリライトしました。
時間軸で物語語ると
ボスの金をくすねた若者を仕置に来た ヴィンセント・ヴェガ ( ジョン・トラボルタ ) とジュールスは、
金を取り戻し、生き残りの学生 マーヴィンを連れて 車に乗るが、銃の暴発でマーヴィンの頭を吹っ飛ばし 血と脳ミソで ぐしょぐしょになってしまう。
何とか友人のジミー ( クエンティン・タランティーノ )の家で 着替えさせてもらい ファミレスで休憩してると
パンプキン ( ティム・ロス ) と ハニー・バニー ( アマンダ・プラマー ) のファミレス強盗に出くわす。
先程の一件で、人生の諸行無常を感じた ジュールスは 大人の貫禄で 優しく諭し 逃がしてやる。
ボスに金を戻した時、ボスのマーセルス・ウォレス ( ヴィング・レイムス )はボクサーのブッチ ( ブルース・ウィリス ) に八百長を命令していた。
ヴィンセントは、マーセルスから妻の ミア・ウォレス ( ユマ・サーマン ) の《お守》を仰せつかる。
ミアの足をマッサージしただけで、窓から突き落とされた前任者の話を聞いて ビビる ヴィンセントだが、
ツイスト大会で優勝したり、
ドラッグのオーバードーズで ひやひや したりしたが、何とか乗り切った。
ブッチは、負け試合を《勝ち》マーセルスを裏切り 逃走したが、ブッチの彼女が ブッチ家代々の 金時計を忘れてきてしまい、ブッチは 殺し屋が待ち受ける アパートに戻るハメになる。
待ち受けるヴィンセントを倒し、逃げる途中でマーセルスに見つかるが、二人とも 変態の質屋に捕まり
マーセルスは《カマを掘られる》事になる。
ブッチは、逃げ出すが マーセルスを助ける為に 日本刀を持って 戻って行く……
こんな感じの話をタランティーノは、チャプターに分け、なおかつシャッフルさせた。
冒頭に パンプキンとハニー・バニーの強盗の始まりを持っていき
結末部を真ん中に持っていき、また パンプキンとハニー・バニーのエピソードで締めました。
映画脳を持ってないと、死んだ人間が生き返ったり、突然 服装が変わったりして 戸惑います。
私もそうでした😅
しかし、ビルを吹っ飛ばしたり 車が爆発しなくても エンタテインメントは成り立つ と世界の映画人に勇気を与えたのは特筆される事で、
また、
落ちぶれていたジョン・トラボルタは14万$のギャラで引き受け、見事に復活し トップスターに返り咲き
バカ大作のバカ役者と思われていたブルース・ウィリスは、ギャラを度外視しても良い脚本を探す様になり、M・ナイト・シャマラン等 良質な才能の映画人達と出会う事になります。
映画の構成が自由化し、登場人物がストーリーと関係無くウンチクを語る 映画造りは、90年代の映画の重要な発明ですね。😄
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