詩人、小説家、批評家、エッセイスト、音楽学者、翻訳家、脚本家など、さまざまな顔を持つ アーカンソー州出身のジェイムズ・サリスが、2005年に発表した『ドライブ』。
フェニックス郊外の《モーテル6》……
壁にもたれて坐ったドライバーは、じわじわ迫ってくる血だまりを見つめてこう考える。
俺はは何かとんでもないミスを犯したのだろうか……
うなりを上げるショットガン。
鋭く光るカミソリ。
そして奔流のようにわき出す血……
ドライバーの想いは、過去と現在が絡み合う……
腕利きのスタント・ドライバーにして、そのスジのプロでもある《ドライバー》。
映画のスタントで名声を博していたが、強盗の逃亡を手助けした事で、気付けばその道の《プロ》に……
仲間割れの挙げ句、流血の事態に陥った《ドライバー》は、その裏にある陰謀に迫る……
「いまならわかる―それは自分が注意を払うべき何かだったのだ。
人生はたえずわれわれにメッセージを送ってくる。それからのんびりと腰をおろし、それを解読できないわれわれを見て嗤うのだ。」
無駄を省いたソリッドな文体の原作を映画化したのが、
デンマーク出身、1970年生まれの ニコラス・ウィンディング・レフン。
ニューヨークと地元デンマークで映画を学んだレフンは
自らの脚本・監督・出演による短編映画がマイナーなケーブルテレビ局で放送されると、出来の良さが評判になり
320万クローネ(約3600万円)の製作費で初長編監督依頼が来る事になります。
若干24歳で脚本・監督を務めたバイオレンス映画『プッシャー』(1996年)は、批評面でも興行面でも大成功を収めました。
2作目となる『ブリーダー』(1999年)も高い評価を得たが、
3作目となる初の英語作品、ジョン・タートゥーロ 主演『Fear X』(2003年)が、高い評価は得たものの、興行的に大失敗し、巨額の負債を抱えて破産してしまいました。
しかしレフンは、ヒット作『プッシャー』の2作目と3作目を完成させ立ち直り
2008年には、
後に『マッドマックス 怒りのデスロード』の主演を務めるトム・ハーディ主演による、
イギリスの服役囚 チャールズ・ブロンソン(本名:マイケル・ピーターソン)
を描いた犯罪映画『ブロンソン』を完成させ、
一部では《21世紀の『時計じかけのオレンジ』》と評されました。
そして満を持して、初ハリウッド映画に挑んだのが『ドライブ』です。
元は、ポール・シュレイダー脚本、ハリソン・フォード主演の別作品が、ハリウッド第1作の予定でしたが、
(『ラスト・リベンジ』原題: 『Dying of the Light』2014年 に、監督はポール・シュレイダー、主演はニコラス・ケイジで完成しました。)
ラストシーンで意見の相違があり、頓挫。
そこで『ドライブ』が浮上してきます。
レフンは、インタビューでこう語ります。
『ライアン・ゴスリングから連絡があったんだ。
「きみの映画のファンだ。何か一緒に映画を作らないか?」ってね。
もともと「ドライヴ」を映画会社は「ワイルド・スピード」シリーズのような派手なアクション映画にしたがっていた。
でも、ぼくとライアンは全く違う意見だった。
もっとリアルながら悪夢的な作品にしたかった。
ただ、ライアンと初めて会ったときに、ぼくは体調が最悪で帰りはライアンの車で、送ってもらうほどだった。
そんな最悪の初対面だったけど、こうやって素晴らしい作品を共に作ることができた。
この映画の方向性を守り抜き、完成させたことで ぼくとライアンの絆はかなり深いものになったんだ。』
映画を彩るSoundtrackは、テクノ・ミニマル・ミュージックを使うことで、車を題材にすることによる「男臭さ」を中和する意図があったと言います。
レフン監督はスタッフと共に、ドイツのクラフトワークをはじめ、ヨーロッパの電子音楽を片っ端から聞いて選曲していきました。
オープニングでかかるKavinskyの「Nightcall」。
ライアン・ゴズリング演じる《ドライバー》と、キャリー・マリガン演じるアイリーン母子が初めてドライブデートするシーンに流れるCollege feat. Electric Youthの「A Real Hero」
そしてオスカー・アイザック演じるアイリーンの夫の出所パーティーでかかっている曲、Desireの「Under Your Spell」
予告編でも流れる『ヤコペッティの残酷大陸』(71年)の主題歌、リズ・オルトラーニ作曲の「OH MY LOVE」
この曲は、最初から使うと決めており、編集もこの曲に合わせて演出したみたいです。
音楽のクリフ・マルチネスにも同様に、これら電子音楽の雰囲気を意識した形で曲を作ってもらったそうです。
この、ハリウッドでの初監督映画『ドライヴ』は、2011年のカンヌ国際映画祭のコンペティション部門で上映され、監督賞を受賞して、ニコラス・ウィンディング・レフンの評価を確実なものにしました。
アラン・ドロン主演の『サムライ』(67年)、
ウォルター・ヒル監督『ザ・ドライバー』(78年)等の寡黙な主人公に影響を受けた『ドライブ』
この Soundtrackを聴きながら、渋く COOLに 夜の街をドライブしたいもんです。
《作品データ》
『ドライヴ』 原題『DRIVE』
監督
ニコラス・ウィンディング・レフン
脚本
ホセイン・アミニ
原作
ジェイムズ・サリス
『Drive』
製作
マーク・プラット
アダム・シーゲル
ジジ・プリッツカー
ミシェル・リトヴァク
ジョン・パレルモ
製作総指揮
デヴィッド・ランカスター
ゲイリー・マイケル・ウォルターズ
ビル・リシャック
リンダ・マクドナフ
ジェフリー・ストット
ピーター・シュレッセル
出演者
ライアン・ゴズリング
キャリー・マリガン
ブライアン・クランストン
クリスティーナ・ヘンドリックス
ロン・パールマン
オスカー・アイザック
アルバート・ブルックス
音楽
クリフ・マルティネス
撮影
ニュートン・トーマス・サイジェル
製作会社
ボールド・フィルムズ
オッド・ロット・エンターテインメント
マーク・プラット・プロダクションズ
モーテル・ムービーズ
配給
アメリカ フィルム・ディストリクト
日本 クロックワークス
公開
フランス 2011年5月20日
(第64回カンヌ国際映画祭)
アメリカ 2011年9月16日
日本 2012年3月31日
上映時間
100分
製作費
$15,000,000
興行収入
世界興行収入 $76,175,166
アメリカ $35,060,689
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