戦争は終わってない

終戦からすでに78年の月日が立ちました。人の一生ぶんに値する年月が。昭和２年生まれの僕の親父は終戦の年に18歳。当時予科練に所属していたので戦争がもう少し長引けばいづれは特攻隊員として機体とともにその若い命を桜と散らしていたのかもしれません。 戦争が悲劇であることは間違いない。戦争で息子を亡くすということが母親にとってどれほど辛く耐え難いことかは男である僕には想像も着きません。僕のお婆さんは僕の親父の兄にあたる人をすでに戦地に送り出して亡くしていますから敗けたとはいえ戦争が終わったことには正直ほっとしたに違いありません。しかしながら男というものはやはり感覚が女性とは少し違うようです。僕も子供の頃から漠然ともしも戦争が起きればきっと僕も一兵士として戦う道を選ぶだろう。特攻隊員であれば僕も敵の戦艦に向かって喜んで突っ込んでいくだろう。なんて考えていました。確かに怖いことは怖いけれども愛する家族や同朋我が故郷を護るためなら命を捧げても惜しくない。たぶん生物学的に云って男とはそういうものなんでしょう。厄介ですね。男って。 ですが男というものが元来そういうものだから戦争が起きるしいつまでも戦争が無くならないということでは決してない。僕らにも理性がありますから普通はあらゆる手を尽くして戦争を回避しようとするでしょう。戦争は当然あらゆる多大な犠牲を生むものですから。先の戦争でもギリギリ最後まで回避の手段を探り続けていたのも事実です。これは当時の御前会議などの記録を見ても明らかで日本はあくまでも自衛のためにやむなく開戦へと踏み切らざるを得なかったのです。 僕ら日本人が何のためにあの戦争を戦ったのかと云えば一に日本の独立自存と自衛のため。二には東亜の解放です。これはあくまでも二次的な目的として掲げられたものかもしれませんが事実として当時のアジア諸国のほとんどが西欧列強の植民地だったのでありよく云われるようにあの戦争が欧米民主主義vs日本全体主義の戦争だというのは嘘です。日本は400年以上に及ぶアジアの植民地支配という西欧の帝国主義と戦ったのです。それがあの戦争における日本の大義であったことは間違いありません。 東京裁判で被告側の証人として法廷に立った石原莞爾が ‘ペリーをここに連れてこい！’と一喝した話は有名ですがあの戦争のそもそもの発端が何処にあるのかを示唆する正に的を射た言葉だと云えるでしょう。 アメリカが民間人を標的とする大虐殺という戦争における禁じ手を犯すに及んで日本はポツダム宣言を受諾し敗戦という事実を受け入れました。すでに終戦の方向を模索し日本側から打診していたにも関わらずアメリカが無視し続けたのはすでに原子爆弾を日本に対して使用することを決定していたからに違いありません。 日本は戦争に敗けはしましたが一方の目的を達成することは出来ました。戦後日本の戦いぶりを目の当たりにして目覚めた東南アジアの諸国が植民地支配に抵抗し次々と独立を勝ち取っていった。つまり事実として日本の身を挺した戦いがアジアの解放という目的を達成する結果を生んだのです。(終戦によってようやく帰国することが出来るのに敢えてインドネシアの独立のために千人近くの兵隊さんたちが現地に残って一緒に戦ったという事実もあります。) 敗戦によってあの戦争のもう一方の目的─独立自存の道は断たれました。GHQによる７年間の占領が終わり表向き日本は独立したことになっていますが事実とは異なります。サンフランシスコ講和条約が調印された同日深夜吉田茂がたった一人で国会の審議にかけることなく調印した日米安保条約─これによって米軍の無期限駐留を認めその後の日本がアメリカの属国としてあり続ける道を開いたのです。吉田茂は日本では戦後の経済復興の道を開いた名宰相として宣伝されてきましたが事実ではありません。事実はマッカーサーには常に平身低頭。すべて向こうの言いなりだったそうです。アメリカではポチと呼ばれていたのも事実なんでしょう。まるで安倍さん亡き後如実になった岸田首相のポチっぷりと瓜二つ。結局のところ戦後78年間濃淡の差はあれ日本の首相は皆多かれ少なかれアメリカのポチだったのです。独自外交を目指したり言うことを聞かないものは失脚されるか消されるか。自由などはなかったのです。経済は自由にやれたじゃないかと云うかもしれませんが事実ではあるけれども結局冷戦が終結した後から日本は完全に回収期に入って富が海外に流れる仕組みを作らされ(郵政民営化の頃から新自由主義などという名のもとに)以来30年以上経済成長は完全にストップ。今や増税や社会保険料などの増加によって国民負担率のみ上昇してむしろ事実上国民は貧困化に向かっているにもかかわらず政府は海外にじゃぶじゃぶとおカネを流し続けることを止めない。すべては日本が未だに敗戦状態の属国であるという事実と政府がアメリカの言いなりポチであるという事実を裏付けるに充分でしょう。 今の政治家たちのほとんどはアメリカにこのまま従属し続けるかそれとも第二の選択肢として中国にひたすら媚びを売るかという哀れな属国根性しか持ち合わせていないように見えます。情けない。第三の選択肢は？独立自存の誇りは何処に消えてしまったの？親切な何処かの国がこの軛から解放してくれるわけもなく自らそれを求めない限り国家の主権と自由は永遠に戻ってきません。 政治家を動かすのは国民の声以外にはありません。その国民自体がマスコミに洗脳されたまま政治に無知無関心無気力の民であっては政治家も変わりようがない。先ず変えなければならないのは僕ら国民の意識以外にはないのです。 僕らが真の独立を勝ち取るまではあの戦争は未だ終わってはいないのです。僕らが本当に終戦記念日を祝うべきなのは正にその時なのです。