(男)出町柳の 川辺りに 萠える蓬よ なぜ匂う 呼んで呉れても この径を また踏むあすが 来るじゃなし (女)忘れ得もせず 死ねもせず 渡るあの日の 葵 橋 橋の擬宝珠に 思い出の 名もない白い 花が散る (男)胸にしみつく 京鹿の子 うすいえにしの 紅のあと どこで相見る あてはなく 鴨川ながれ 陽は翳る (女)人のさだめを よそに見て 古きみやこの 春おぼろ 八瀬か鞍馬か 山寺の 鐘の音遠く 眸がうるむ (二人)鴨の川瀬に 浮く月は 眉のかたちの なごり月 比叡、吉田の 山なみも 霞にぬれて ほのぼのと