幸せのままで、死んでくれ 生きるのは嬉しいと笑ってくれ そして最後にこの地べたに 花束を叩きつければいい 独りで 嘘になれ 朝がうたかたの夜を呑み込む そうさ すばらしいことだ まともな日々を祝おう ところで僕はひかりだけを拾って それが人生だと嘯いていくのか ノイズの無い部屋 爪先を立てて 胸を切り裂くけど 喧騒を期待していたのに 惨めな静寂 あなたの声 浴びたくなる 幸せのままで、死んでくれ 白白と影もない完全さで まるで人生が 無いみたいだ それでいい なにもなくていい 美しい嘘になれ どうやら 雨粒が喘いでいる 西陽に灼かれ すべてが乾いてしまうんだろう 僕は悲しみが跡形なく 消えていく様をぼんやり視ていた あなたの肌には熱が在ったのに 過去に置き去りだな みだらな記憶の糸の端を 奥歯で咥える 切れてくれりゃ 楽になれる 呆れるよ もうここにはない あの時間 あの視線 あの苛立ち 肺の底から 漏れ出すのは もういらないはずの言葉だ 「愛」さえも嘘になるの そうだよ いのちは 流れるだけの河だ お願い 湖畔で書き留めておくれ 誰も見ていない それは存在しない いやだ いやだ 震え 震え 波を生んだ どうしてだろう 凪のなかに沈んだ 幸せのままで、生きてきた 生きるのは哀しいと許してくれ そして最後にこのいのちも 愛された 夢を見た 幸せのままで、死んでくれ 生きるのは嬉しいと笑ってくれ そして最後にこの地べたに 花束を叩きつければいい 独りで 嘘になれ