数千年前のあの日僕たちは 長い長い旅を誓った 訪れるかわからない世を目指し これは呪いじゃなく――願い 明日には僕ら二人は夫婦となって 二つの国はひとつになるだろう さだめの愛だとしても僕の心は 君に永久を誓った ああ、愛おしい 将来を一生懸命に語る君が この時間がずっと 続くはずだったのに… 数千年前のあの日僕たちは 二度と離れないと契った 果たされるか分からない世の契り これは別れじゃなく 出会い 明日には僕ら二人は敵となって 二つの国は殺しあうだろう 不浄の愛だとしても僕の心は 君を永久と誓った もしも会えぬのなら 苦しくて胸が張り裂けそうになる 君がいれば何もいらない はずだったから 数千年先にそれが過ちだと 気付かされる事だと知ったとしても 君一人が逃げたいと望むなら 僕は君と共に行こう… 部屋を抜けて堀を超えた 走る走る君と共に 「どこか遠い見知らぬ場所へ」 嘆く君の目に篭る群青 村を抜けて山を超えた 咽る息に挫ける足 これ以上は進めない 二人歩む道はないのでしょうか 「そんな急いで何処へ行く?」 (と、通りすがりの猫は喋った) 「ああ、 なんて哀れな二人にゃんだろう 急いでるじゃ急いでるにゃ 死に急いでも生き急いでも 進む道は結局三途 急がば回れとも知らずに。 だがわかるにゃ。 もう何も――虚しいんだろ? 戦争を始めてしまった互いの母国、 契れぬ夫婦、自主勘当、逃避行。 安心しにゃ。そんな哀れに遭われ 人畜無害の二人を放おっておくほど 俺は猫ができてないわけじゃない。 お前らが一生離れない取って置きの 契りを教えてやるにゃ」 「こ、これは…」 「それぞれの脇差にゃ、 それでお互いの心臓を同時に 刺し合うんだにゃ」 「「?!」」 「しかも寸分と違わず同時にゃ 互いに互いを死んでも 愛し合うだけの信頼と想いが 極限までないとできないぜ?」 「でもにゃ、この契約――― いや呪いが掛かれば お前らは二人何度生まれ変わっても 何度も巡り会える。保障する。 しかし巡り会える代償に この呪いが続く限り 絶対にお前らは幸せには―― なれない」 「ある時は憎しみあい ある時は時代に引き裂かれ ある時は死が二人を分かつ。 永遠に絶望の世界に 何度も何度も生き続ける。 苦しいだろう、狂おしいだろう、 出会っては引き裂かれ くっついては剥がされ、 いっその事もう 離れたくなくなるだろうにゃ。 でも離れられない。 不幸になるためだけに 巡り会い続ける、 まるで死ぬために 生まれてくる人間のようにゃ お前らの想いが勝つか。 呪いが勝つか 絶望の中未来を 何度繰り返すのか分からなくても お前らはそれでも―行くのか?」 「行く・・・」 僕の手から伝わる心臓のぬくもり 君の手から伝える心臓の想い 僕たちは今一つになっていく 涙と血が伝う… 目がかすむ君の顔が見えなくなる 出会った日の君の事思い出す 君の笑顔が絶えない世を信じ これは呪いじゃなく願い… 数千年経とうとも僕たちは 数万年経とうとも惹かれあう 巡り廻る絶望の未来超えて これは終わりじゃなく 始まり 「殺し合いから始まった物語に ―救いなんてあるわけにゃいだろ」