蛍火を 唯一ひとつ あかりにて うす雲が かかる三日月 光無く ほんのりと かすかに助く 蛍の火 影すらも 映らぬ夜道 ひとりゆく 嗚呼 あなただけ あなたの熱を 唯々求めて 雲に隠れる三日月のように 翳りゆく 空の濃い雲 月隠す ただひとつ あなたの熱を 知りたくて 開け放つ 薄い闇中 その部屋に 残された 薄絹ひとつ 空蝉の 嗚呼 体温すらも残らぬその薄絹を 抱きしめて どこまでも あなたの熱を感じたかった 私の熱をうつしたかった 共に過ごす夜だけ求めて 蛍も月も届かぬその空蝉に あなただけ あなただけを 求めていたのに あなたの鼓動 ただそれだけを かはたれの その薄さすら 疎ましく 眠るのか 命尽きたか 蛍火は 今はただ 仄かにすらも 映らずに 願うのは 三日月の影 こころ闇