魚の皮の少し焦げた匂いが 軒から軒へと音も立てずに飛び 回ると どこからともなく君が現れたのだ 帰り道のばけもの 声のない友達 ご機嫌いかが? とケツから尻尾をのぞかせた 当たり前みたいに大きな 尻尾をのぞかせた 僕は慌てて逃げていったのだ 賑やかで少し寂しい町 さようなら嫌いな町 灯りがひとつ、ふたつ、みっつ 生活をしているよ 狐の歌は悲しいもんね そしたらぽとりぽとりと花咲く庭を 出てゆく きみは狐で 僕は人間 本を読みながら泣いたり 洗い物しながら歌ったり 洗濯物の山を眺めながらぼんやり どっかの山寺の鐘がご~んと鳴り 響きゃ きみはこ~んと鳴く こんこんと鳴く あぁとんかつが食いてえ とんかつが食いてえ テーブルの上に並べて 赤い星のラベルの瓶ビール 騙してくれりゃあよかったのに 今じゃ夢にも出てこない 僕はこんこんと泣く 灯りがひとつ、ふたつ、みっつ 生活をしているよ 人間の歌は悲しいもんね そしたらぽとりぽとりと花咲く庭を 出てゆく 僕は狐で きみは人間