遠い遠いあの寂しい海へずっと 何にも持たず 消えていったあなたは 誰でもない人 葬儀屋の娘 お前は泣かない笑わない 花をひとつ飾るだけだ 庭になった杏子の実に嬉しくって 嬉しくなって 屋敷森の木陰で日が暮れるまで 遊んでいる 葬儀屋の娘 お前は泣かない笑わない 花をひとつ飾るだけだ 朝は朝で靄の中を歩く川沿いの土手 犬にも猫にも河童にも 気付かれんように 葬儀屋の娘 お前はいつも黙ったまま 花をひとつ飾るのだ 狐だか狸にでも化かされてるような 気持ち 夕暮れの隙間を縫うコウモリを 数える 葬儀屋の娘 お前は泣かない笑わない 花をひとつ飾るだけだ 冷やした梅酒いちばん好きなもの 氷が溶ける あの水たまりは昔 友達が消えた跡なのね 葬儀屋の娘 お前はいつも黙ったまま 花をひとつ飾るのだ 遠い遠いあの寂しい海へずっと 何にも持たず 消えていったあなたは 誰でもない人 葬儀屋の娘 お前は最後まで泣きながら 花をひとつ飾るのだ 葬儀屋の娘 お前は僕の好きな人 花をひとつ飾るのだ バイバイ