摺硝子を模す陽炎 黒い雨雲が消える頃 垂れ流れた水の音が 錆びつく柵へもたれている 外は波打つ丘のよう 夜の手前で倒れている 騒ぐ羽虫の集う窓 湿る空気が胸を突く 飛べるよ 古い列車へ飛び乗れば あなたの町が見えてくる この気持ちを置き去れば 望んだものが見えてくる 長く閉ざされた遮断機が すれ違うままのふたりのサイン 鈴が形どる呼び声は 私の知らぬ風のもの 汚そう 時が私へ押しつける 耐え難く老いた端の記憶 言葉だけでは埋められない 靄が彼方をまとっている はやる気持ちに急かされて 訳も分からず駆けていく あなたなしではいられない 狂おしく咲くありふれた斜光