仕事終わり いつものキャンディーショップ 張り詰めていた神経と心を 笑い声が 優しく包む 「じゃーな! ミーシャ!」 「ミーシャさん、またね!」 「ああ、気をつけて帰るんだよ。」 キャンディーショップの店主、 ミーシャ それが彼の仮の姿 組織の人間は誰にも 正体を明かせない。 すべてをさらけ出せるのは 『家族』であり同じ組織の一員 つまり……。 「おかえり。」 「ただいま。」 家に帰った家族の挨拶 オーガストが教えてくれた 当たり前の日常 そうだ、いいものをあげる いいもの? 願いが叶うクッキー 包み紙に願い事を書くと叶うんだ 願いが叶うクッキー? そんなものホントにあるの? 「まあ、包み紙に書くっていうのは 僕が付け加えたんだけどね……。」 インチキ 願いが叶うのは本当 ほら、食べてみて 「マシュマロの方がおいしい。」 願い事は書かないの? 思いつかない どんなことを書けばいい? お金持ちになりたい 絵が上手くなりたい 好きな人のことでもいいし 心に思ったことを書けばいい 「じゃあ、 オーガストの願いは……?」 「僕? 僕はそうだな……。」 「ただいま。」 「おかえり。」 「……おかえり。」 さあご飯にしよう みんなお腹がすいただろ? 久しぶりにみんなで食事を楽しもう お腹がすいた 今日のご飯はなに? キノコと野菜の特製スープ 少し焦げちゃったけどね エイプリルの激辛料理よりマシ 料理のできないお前が言うな 焦げた料理も悪くない 食べられればなんでもいい 当たり前の日常があれば それだけで…… 「いただきます。」 「いただきます。」 『家族』なんて知らなかった 『家族』を知らずに生きてきた でもきっとこれがそうなんだ 当たり前の日常の当たり前の幸せ 当たり前じゃない 特別な家族 いつまでもいつまでも 続きますように 「寝ちゃった。」 「子供か……。」 「……おやすみ…… ディセンバー……。」