私が生まれた日 父が植えてくれた 小さな桜の木 凍える冬の朝だった 雪をかき分け 白い息を吐いて か細い苗木をしっかりと大地に立た せた そして父は空へ祈り捧げた この子がこの木とともに健やかであ りますように 冬をくぐり抜け 満開の花をつけるように この子の人生に希望が花開くように 息子生まれた日 私が植えた 小さな桜の木 初夏の陽射しの中だった 私よりもずっと大きくなった 父の桜の隣で無邪気に揺れていた そして私は父に語りかけた あなたがこの木に込めた思いが今わ かるように いつか息子も愛する誰かを抱いた時 この木を思い出し 涙を流すでしょうか 孫娘を連れて 息子が植える 小さな桜の木 今は春の芽吹きの時 真っ白な産着に包まれた孫の 頬にひとひら舞い降りてきた花びら 薄紅色をした眠れる君よ あなたは教えてくれた 命とはつながるもの 眼を開けた彼女はうれしそうに笑い かけていた 大きく枝を張った 二本の桜の方へ いつか私はきっと目にするだろう ここに無数の桜の森が広がる様を そして聴くだろう銀河のような花吹 雪の中 高らかな命の 終わらない命