投球

歌詞

「ぼく本気で野球をやってて でも最近うまくいかず しんどい日々を送っています 今の自分に合う神門さんの曲を 神門さんに 教えてもらえないでしょうか?」 DMにはいろんなメッセージが届く その時 いつも心がけているのは できる限り誠実に 嘘のない本音で答えることだ 「答えは控えようと思います 曲の受け取り方は 聴き手に任せたい部分で その質問に答えることは 受け取り方を 限定するように思えるからです 不足してる栄養素を体が 求めるみたいに そういう時こそ 僕の曲に限らず ビビッときた直感から 求めてる曲と 出会えたりするもんなんやと 思います」 ドライともとれる返信に 本物の「ありがとう」が届く それが無性にうれしく 彼と曲との出会いを祈りながら ハートのスタンプを押した 「ぼく本気で野球をやってて ぼくには自分を 弟のように可愛がってくれる 先輩がいます 今日はその先輩のことで相談があり メールをさせてもらいました 先輩は最近野球がうまくいかず 苦しんでいます 今の境遇に合う曲を神門さんに DMで尋ねもしたそうです 丁重にお断りされたことも 知っています ですが 神門さんの曲で先輩のことを 救いたいんです 無茶なお願いだとは知っていますが 今の先輩に合う神門さんの曲を 神門さんに 教えてもらえないでしょうか?」 DMにはいろんなメッセージが届く 「ではそんな曲を作りましょう あなたの先輩への思いを 聞かせてください」 炎のスタンプが灯る 「先輩は自分のしょうもない話も 悩みもぜんぶ聞いてくれ いつも笑わせてくれます 笑顔しか似合わない先輩ですが その先輩が今日は泣きそうな 顔をしていました 1番嫌なことは先輩が野球を 辞めることです 先輩のダイナミックな投球が 大好きです 励ましの言葉を探すのですが 見つからず でも絶対に 先輩を1人にはしたくないです 私はまだありがとうを伝える 気はありません 伝えるとお別れみたいになってしま うからです 今日も明日も明後日も おはようやおつかれの日常会話を 交わしたいです」 それを読みながら 「なんや」と安心する 彼が求めている曲は 彼のすぐそばでずっと鳴り 続けていたのだ