空の藍に雲を一つ落としても 水平線にたどり着けなくて 君に会いに行く度 飲み込んでゆく 波に似ていた 形も名前も知らないもの 乾いた路面に差した斜陽 潮騒の鳴いた路地裏を抜け 誰もいない漁港に座礁した 僕らがいた世界は黙り込んで 振り向いた先に 君の影が見えた 気がしたんだ その瞳に映し出した 君の引力が手を引いて 裸足で波を待った 呼吸さえも忘れてしまって 遠く揺らいでいた陽炎を ガラス玉に透かして 掴んだ柔い結び目が 解けないように さざめいた水面に 映る影法師 漸近線の向こう側にいて 遠い町へと連れ出したあの日も 触れてしまいそうでいた 僕ら 桟橋の先で 夕凪を横目に 君を見ていた その瞳に映し出した 君の引力が手を引いて 裸足で波を待った 呼吸さえも忘れてしまって 今だけはこのままで プラトニックを着飾って 掴んだ離れないようにと 畔に沿って歩く 深い海へと片足を浸して 溺れてしまうように まだここに居たいんだ 瞳が映し出した 君の引力が手を引いて その瞳を覗き込んだ 溶けだした青と僕が混ざって 遠く揺らいでいたこの夏も 透明でいる僕らも 掴んで離さない何かを 探しに行こう