霧の中で掠れたあなたを 追いかけるのも もうやめてしまった 言葉の不確かさに嘆いて 雨の上がらない心は 誰にもわからないまま 消えて 溶けて 今だけ みえない嘘を確かめて そっと消えてしまいそうな記憶に騙 されてるの それ以外もう救われないから 抱きしめてよ 美しいままで 言葉になる前に 午前六時と朝焼けが重なる時候の 肌を刺すような寒さが身を芯から凍 らせた 冷え切って もう元の温もりに戻せないんじゃな いかと 恐ろしくなるほど 淡い春がきて いくつかの温もりが膨れ上がり 鮮やかな緑が 生を誇張するかのように地面を覆っ ていった それでも私は 春の日の優しい笑みを裏切るように あの時の冷たさが いつまでも心の奥に積もっていた それから幾度か春は過ぎた今でも 消えずにいる