潮が満ちる 月が透ける 風もなくて 音もなくて きみを待った こんな日はなぜか また会える気がしてさ 海猫とか 梔子とか 指差しては 教えてくれた きみが見てた 世界の名前が 不在の日々を飾る 私の名を呼ぶ 柔らかな声も その訛りも 忘れぬように 声に出しながら 返事を書くんだ 波にかき消されないように いずれまた嫌になるほど 話ができるなら 今贈る言葉は きっとこれではないな いやこれでもないかな あぁ また紙を無駄にした 時が満ちる きみは透ける 風もなくて 音もなくて 海に向かう こんな日はいつも 呼ばれてる気がしてさ 波を追いかけて 自転車を漕いだ さよならも追い越すように 籠からこぼれた 花のひとひらが 流されていくのを見てた いつも「冗談だよ」 なんて器用に逃げるから 見落としていたんだ その笑顔の歪みも 何か言いたげな目も あぁ また空が滲んでる やがてこの身も朽ち果て 波間に還るなら 今するべきことは 祈りなんかじゃなくて また次の約束を あぁ まだできない いつかこの手紙が海の底へ届く日と どちらが早いかな ずっと愛しているよ いつか直接言うよ あぁ 待っていてくれるかな 「ご無沙汰だね。 10月いつかの夕凪に 会いましょう。」