識らないまま死んで往けば 人に為れるのでしょう 領りたいから厄介なんだ その慾の形を 壁一枚さえ 隔てぬ牢獄が ひとつをふたつに別った 破れ鍋に綴じ蓋 鏡写しならば きれいにはまるはずでしょう いつも四つ脚ついてかき抱かれ あなたの脊椎を数える夜 まっさらなうなじを汚すように 落とした涙の痕指で撫ぜる あらましから間違いなら 誰が正せたのでしょう? 識りたいから厄介なんだ その歯の鋭さを 今更離せないのは お互い様なんでしょう やらかいから厄介なんだ その胎の緋さも 抗えぬ衝動 触れるたび起きる 間違いの情動 わかちあうよりも 奪いあうのが似合う 二人六脚で征く畜生道 あなたを覗けば 私が映るのは この罪を忘れないため? 失うばかりが 人生と云うけど 失せものばかりが 美しく見える 知りたいと言えないから 先に手が出たんでしょう 知ってるから 厄介なんだ その背の冷たさも 識らないまま死んで往けば 人に為れるのでしょう 領りたいから厄介なんだ その慾の形を 蛇の道は蛇 馬は馬方よ 同じ穴から這い出たむじなの 所詮人の真似事 二人六脚で逝く畜生道