地方都市で雨に降られたトラックが 私の街にその雨も一緒に運んできた この部屋から見える限りの ほんのささやかな冒険譚だった きっと言葉だって本当は そんなふうにして届けられて やっと伝わっていくはずなのに いつのまにか 簡単に散らばっていくものばかりで 溢れている 砕けた破片じゃ 心の空白は埋まらないのに 連れ出してほしいなんて言わない 広がっていく景色なんていらない みんなと同じ幸福なんて知らない ただ私が欲しいのは 私のためにつくられた ずっと私のためだけにある 美しい言葉 共感も 同調も 連帯も 流行も クラスメイトに合わせるくだらない 会話も そんなもののためにできた 言葉なんて もう聞きたくもない 私の街で雨に降られたトラックは どこか遠くの都市に この雨も一緒に運んで行くんだろう この部屋から見える限りに ほんのささやかな別れを告げて 見送った たった一つの言葉を望んでいる 私みたいに ずっと待ち続けている 誰かのもとにだけ 風に運ばれていくこの雨雲と一緒に 向かっているのならいいなと思った どこにも散らない 私だけの言葉を 君がくれるなら それだけでいいよ 私たちは もう戻らない 全部ここに 置いていこうよ