返すべき言葉を 見つけられないまま、 掛けるべき言葉を 見つけられないまま、 イライラとモヤモヤと サンダルを突っかけ外に出る。 湿った夜空の下、 寝静まった界隈は、 遥かから微かに聞こえてくる 踏切の音を虫けらのように 黙殺し、微動だにしない。。 朧月。君よ、今宵も生き延びろ。 朧月。君よ、今宵も生き延びろ。 返すべき言葉を 見つけられないまま、 掛けるべき言葉を 見つけられないまま、 コンビニの駐車場の片隅、 灰皿の傍にしゃがみ込む。 舌打ちまじりに啜る缶コーヒーは、 盗っ人のようにコソコソと、 水銀のように白々しく、 歌に爛れた喉元を 滑り落ちていく。。 朧月。君よ、今宵も生き延びろ。 朧月。君よ、今宵も生き延びろ。 そしてまた読み返す。 いくつもの傷跡を そのまま縫い込んだかのような、 いくつもの痛みを そのまま封じ込めたかのような、 今にも破裂せんばかりの 切実が綴られた、 君からの便りをまた読み返す。 自分と自分で 罵り合うような日々が、 自分と自分を 必死に繋ぎ止めようとする日々が、 自分で自分を 思い留まらせようする日々が、 自分との戦いに次ぐ、戦いに次ぐ、 戦いの日々が綴られた、 君からの便りをまた読み返す。 返すべき言葉を 見つけられないまま、 掛けるべき言葉を 見つけられないまま、 がらんどうの不甲斐なさの淵から モグラのようにただ 闇雲に君の健闘を祈り、祈り、 祈ることしかできない がらんどうの不甲斐なさの淵から モグラのようにただ 闇雲に君の健闘を祈り、祈り、 祈ることしかできない がらんどうの不甲斐なさの淵から モグラのようにただ 闇雲に君の健闘を祈り、祈り、 祈ることしかできなくてごめんな。 それでいてもしも、 世にもクソバカタレた自惚れに、 自分自身、強いて強いて 目を瞑ってやるとするならば、 そして君がそれを 許してくれるとするならば、 返すべき言葉でも 掛けるべき言葉でも ないのだろうけど、 どうか言わせて欲しい。 君よ、この歌が君に届くまで。 君よ、この歌が君に届いてからも。 君よ、 この歌が君に届いてからこそ。 君よ、生き延びろ。 朧月。君よ、今宵も生き延びろ。 朧月。君よ、今宵も、 君よ、今宵も、生き延びろ。