テレビの消えた画面に ぼんやり映る 僕がいる こんな顔していたんだな 誰にも見せない 昼下がり この部屋の速度で 今日は生きていたい 追い越してく時間を 見送っていたい 何も起きない午後が こんなに満ちている ただ座っているだけで 僕に戻っていく 少し黄ばんだエアコンが 低く短く 返事をする 廊下を抜けて 靴下を脱ぐ 畳の跡が 頬につく 棚に並んだ 旅の置物 知らない街の名前を読む 誰かがここへ持ち帰った うれしい日が 残ってる 山から届く 湿った匂い 畑の土と 名前のない草 懐かしいとは 少し違う 初めてなのに よく知ってる この部屋の速度で 今日は生きていたい 追い越してく時間を 見送っていたい 何も起きない午後が こんなに満ちている ただ座っているだけで 僕に戻っていく 火を入れてない暖炉の前 膝を抱えて あくびひとつ 丸い蛍光灯から出る紐を 目でなぞって また目を閉じる いつも埋めてた 話の隙間 ここでは誰も 困らない 木々のざわめき 聞いていたら 言おうとしたこと もういいや 伏せたスマホに 手を伸ばして 何を見るのか 忘れて笑う 窓の明かりが 少し動いた それをしばらく 眺めていた この部屋の速度で 今日は生きていたい 急ぎ足の僕にも こんな日があっていい 何も起きない午後を 好きになっていた ただ座っているだけの 僕も悪くないな 明日になったらきっと 慌ただしくなるけど この部屋を思い出せる 少しゆっくり 歩ける
