舗道の朝露がほどける頃 唇の端で光がほどけた 改札を抜けた余韻だけが 胸の奥で静かにざわめく ポーチの底の小さなグロス 涙を隠すための味方 「平気」と言えばほどけてしまう 脆い心を艶で縫い止める 涙色グロス 微光を纏い 最後の接吻を封じ込めた 滲む告白は声にならず 震える呼吸だけが真実になる 涙色グロス 塗り直すたび 少しずつ未来に近づいてく 綺麗な別れを演じるたび 私の素肌が強くなる 電話帳から消せない名前 沈黙の通知が胸を叩く ラメの粒ほどの小さな希望 ポケットの奥でまだ息をする 正しさよりも優しさ選び 今夜だけは私を赦したい 涙色グロス 夜明けの手前 残照の街をひとり歩く 言葉より先に唇が鳴り 微かな艶で「さよなら」を歌う 涙色グロス 乾くたびに 記憶の亀裂へ染み込んでいく あなたの季節を鞄に置いて 新しい私の温度を試す 光沢と痛み どちらも私 この傷ごと抱いて前へ進む 涙色グロス 曇天の下 曇りガラスにも星は宿る 喪失の味を舌先で確かめ 私という名の色を引く グロスが乾けば余白が生まれる そこへ一文字「ありがとう」と書く
