«艮を 越えて見返し 人の子や 斜陽の橋にて 夜に落つれば» (かゑりみすれば) 常世の裏側 誰も居ない街 隠した黄昏れ 詠み人知らずの上の句聴いたら 隣の世界に迷い込む 七つ重ねた不思議のかるたや 帰り道か片道の切符か 行くもかへるも一重の差 ただ札一枚の裏表 神かあやかしか 誰ぞ隠さん 幻の中に迷う 序歌の詠まれし 閑さや逢魔時 "私ごといなくなる"前に ああ ああ あがりまであと何句 とひぢらに をしゑらむ ゑりて あゐも ゑりて あゐも 縫い影を 跨ぎ迷わん うらおもて (けふをかぎりの) 歩道橋の上の午後4時 44分のかるたは 鍵刺す錠前 下の句握ると 異界の手綱が弛みつつ 七つ隠した不思議のかるたや 世迷言か夜の澪標か 此世の外の道しるべに 噂の怪話思い出して 月か御灯か 誰ぞ照らさん 擦疵目もくれず駆けぬ 伊呂波歌留多は何処へ導きたもう 迷路の終か 明けない罰の夜か その話は "おてつきをしちゃいけない"と 続いてた気がするんだ さあ 神かまやかしか 誰ぞ隠せど 泡沫の街は消えゆ 一句又一句 この手で札取る度 "世界が戻ってく" 匂いがする ああ 巡れど巡れど 夕、暮れず ああ ああ あがりまであと何句