毎日は単調で 仕事は低調 でも マニュアルの通り にらみ合う数式と ズレていく正解 あぁ また平謝り 評定は上位安定 お守り代わりは 「あなたなら"大丈夫" よ」 きっと将来安定 幸せのレールが見えてきた 一つ一つ積み上げてきたんだ 知識も能力も学歴も 僕が歩いてきた道だ それが幸せの近道だ 高く高く積み上げてきたんだ プライドも信頼も称賛も 大丈夫だ 僕は 大丈夫 ダイジョウブ それなのになぜ こんな息苦しくて 繰り返す毎日は憂鬱で 僕はいつだって 最善を選んできたのに 呪文のように張り付いたあの言葉も 今はもう恨めしく思えてきて そうだ そんなお守りなんてなくたって 「先輩、 一杯連れてってくださいよ!」 「悪いけど、 資料作らないといけないから…」 「じゃあ俺手伝いますよ!」 「いやいや、いいって」 「あー、ここの会社、 この前仕事したんですけど 今でも仲良くしてもらってるんで、 俺だいたいわかりますよ!」 「そういう問題じゃないだろ… 仕事なんだから…」 「まあまあ。とりあえず 手伝わせてもらいますから!」 「はあ。明日何か文句言われたら、 僕の責任になるんだからな」 「後輩の伸びしろを 信じてみてくださいよ♪」 「そんなに世の中、 甘くないって…」 一つ一つ当てはめていくんだ 真面目に誠実に実直に 信じるべきは嘘のない数字 勝ちの方程式だ そこに抜け道など存在しない 無視して 上手くいくなんてありえない 本当にそれで 大丈夫? ダイジョウブ この毎日にどこか嫌気が差して 「どうでも良い」言葉がこだまして 僕は間違いだとわかっていたのに 提案に丸め込まれてしまった 「先輩!昨日の資料、 一発OKだったんですか?」 「…ああ」 「いやぁ~よかったですね! 向こうの部長さんも ご機嫌でしたよ」 「お前、連絡取ってんの?」 「よく一緒に ゴルフとか行くんですよ。 先輩も今度…」 「橘、ちょっと来い」 「今回のプロジェクト、 先方から担当を変更してほしいと 要望があった」 「え…」 「真面目すぎて 面白味がないんだとさ、 橘は。……」 逃げ出した 本当はどこかで 腑に落ちてしまった自分がいた 気がつけば走ってた 雑踏をかき分けてどこかへ もういっそ 消えてしまいたいと思った 一つ一つ積み上げてきたのに 真面目に誠実に実直に でもその先がどこに 向かうかも不鮮明で 高く高く積み上げた塔が今 思い出したように 崩れていく音がする 飲み込まれていく 「気づけばなんとなく 見覚えのある山を歩いていた ここなら誰にも 迷惑をかけないと 思ったのかも知れない こんなときまでクソ真面目な自分が なんだか笑えてしまう 結局僕はどこを目指して 何を積み上げてきたんだろうか」